最新記事

医療崩壊

新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実

LAST DOCTOR STANDING

2020年4月18日(土)21時00分
小暮聡子(本誌記者)

――ECMOを使う場合、医師は24時間つきっきりで治療に当たるのか。

そうだ。24時間365日、ECMOを扱える医師が必ずベッドサイドに1人はいる。これはイギリスでアメリカでも日本でも同じだ。なので、ICU(集中治療室)で治療することになる。そもそもICUとは、医師が四六時中、常駐しなければならない部屋のことであり、そこでしかECMOは使えない。

――ECMOを使い始めて、例えば2週間使って回復しない場合は、ECMOを打ち切るというような判断、決断もあるのか。

ある。ECMOを使って治る肺なのかどうかを、例えば肺の一部を取ってきて顕微鏡で見て調べたり、CTを取って治りそうな肺が残っているかどうかを見たりという検査もする。

――コロナ患者に人工呼吸器をつけた場合、その間に何か治療は行われているのか。

コロナ患者に対しては、アビガンやカレトラ、オルベスコといった薬を使い、薬でなんとかごまかしながらやっているというのが現状だ。人工呼吸器で粘りながら、傷んだ肺を使いながら、薬が効いてくるのをみんな待っている。だが粘りすぎると肺がボロボロになってだめになってしまうので、その前にECMOを入れてくれというのが今の流れだ。

――コロナ患者のうち、ECMOを使用して回復する人と、亡くなってしまう人では、何がどう違うのか。

コロナでECMO治療を受けて良くなる人というのは、合併症を回避している。

合併症というのは色々あるのだが、例えばECMOを装着していて出血してしまったとか、新たに(ウイルスではなく)ばい菌に感染してしまったとか、透析になってしまったとか、ECMO治療をする中でECMOの合併症に侵されていくと亡くなってしまう。

ECMOというのは、上手い管理をしないと患者を救えない。肝心なのは合併症を起こさないように管理できるかどうかで、それができる医師が今の日本には少ない。

本来ECMOは、慣れていない人がやるべきものでは絶対にない。それがいま乱発されようとしているので、黄色信号がともっている。

――小倉先生はじめECMOを使える医師は今、どのような勤務状況にあるのか。

ECMOを扱っている医師一般について言うと、自分の施設で経験したことのない数のECMOが稼働してしまっているので、相当疲弊している。病院に泊まりっぱなしの人もいれば、少しだけ帰って寝てまたすぐ戻るなど、まったく休みがない。

場合によってはECMOができないという施設に出向いていき、ECMOを一緒に装着してその場にとどまり、ECMOの扱い方を指導しつつ、自分の病院に戻ってまたECMOを見るというのを繰り返している人もいる。時間外労働は3月の時点で1カ月に150時間や180時間との報告もあがってきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中