最新記事

韓国

コロナ危機の最中の韓国総選挙──文在寅政権に勝算あり

A Mid-Term Test for Moon Jae-In

2020年3月28日(土)15時00分
イルダー・ダミノフ(政策シンクタンク ビジョナリー・アナリティクス研究員)

2つ目の要素は野党の統合だ。新たに発足した保守派連合は、与党にとって手ごわい相手になるのか。

朴をめぐる2016年のスキャンダルの後、保守派の最大政党は自由韓国党へ党名を変更。総選挙をにらんで、今年2月には複数の小規模政党と合同し、未来統合党を結成した。人気もいくらか回復しており、最大野党の支持率はこの2年間に20%から28~34%に上昇している。

しかしながら、この保守派統合の試みは完全なものではなかった。野党第2党の正しい未来党が2党と合同して結成した民生党と、正しい未来党を離党した党員が立ち上げた国民の党を取り込めなかったからだ。

弾劾要求の署名活動も

正しい未来党は今年2月に政党再編を行うまで、2番目に大きい中道右派政党だった。少数派の民生党と国民の党が未来統合党から4~10%の票を奪うとみられるなか、世論調査によれば、革新派は4~9ポイントの僅差ながらも支持率でトップに立っている。韓国の総選挙は小選挙区制を主体としているため、与党の勝利にはこの差で十分だろう。

3つ目の要素は新型コロナウイルス危機だ。今年初め、COVID-19によって韓国では突如、政治的な計算が複雑化。国内の感染者数が8600人を超えるなか、この問題は総選挙の重要な政策課題になった。

新型コロナウイルスの急速な拡大を、保守派の野党側は支持拡大のチャンスと捉えた。危機に対する政権の不手際を非難し、中国からの入国を完全に禁止しなかったとして文を批判することで、彼らは政治的得点を稼ごうとした。

国民請願を受け付ける大統領府のウェブサイトでは、文の弾劾を求める署名が2カ月間で140万人以上に達し、国民の不満が高まっているように見えなくもない。

果たして、文は政治的危機に直面しているのか。世論をより注意深く分析すれば、事態は(多くの場合と同様に)見た目より複雑なことが明らかだ。

まず、韓国国民の大半は政府の新型コロナウイルス対策を支持しており、文の弾劾が実現する可能性は低い。弾劾を求める請願を受けて始まった文への支持を表明する署名活動には、約137万人が賛同。さらに、感染者急増は政府のせいではなく、集団感染を起こした新興宗教団体、新天地イエス教会に原因があると多くの国民は考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き

ビジネス

トランプ氏「習主席から電話」、関税交渉3-4週間ほ

ビジネス

中国で高まるHV人気、EVしのぐ伸び 長距離モデル

ワールド

国連の食糧・難民支援機関、資金不足で大幅人員削減へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中