最新記事

韓国

コロナ危機の最中の韓国総選挙──文在寅政権に勝算あり

A Mid-Term Test for Moon Jae-In

2020年3月28日(土)15時00分
イルダー・ダミノフ(政策シンクタンク ビジョナリー・アナリティクス研究員)

三・一独立運動記念日の式典で万歳三唱する文大統領(前列中央) KIM MIN-HEE-POOL-REUTERS

<文大統領の評価が問われる4月の韓国総選挙、複雑な政党政治の動きと結果を左右する3つの要素を分析する>

韓国の政党政治は時に非常にややこしい。目まぐるしい党名変更や政党の分裂・合併の連続で、そこに複雑な選挙手続きが加わる。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)や国際的な経済危機の渦中にもかかわらず、韓国では4月15日に予定される総選挙の準備が進む。現政権の支持派も反対派もそれぞれ分断状態にあるなか、国論はますます分裂。今回の総選挙が大接戦になるのは間違いない。

総選挙の政治的文脈を理解するには、近年の韓国政治の展開を少し振り返ってみる必要がある。左派寄りで革新派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支える政党は、「共に民主党」だ。文が大統領の座に就いたのは、前任者で保守主義者の朴槿恵(パク・クネ)の失脚後。2016年に発覚したスキャンダルへの対応を誤った朴は翌年、弾劾による罷免で失職した韓国史上初の大統領になり、2審で懲役25年の実刑判決を受けた(その後、最高裁が審理差し戻し)。

2016年のスキャンダルは朴のキャリアを破壊しただけでなく、その支持基盤だった保守政党の支持率を2000年代前半以降で最低水準にたたき落とした。一方、文と共に民主党の支持率は急上昇。2017年の大統領選では、雇用創出や公正な社会政策、対北和解を公約にした文が圧勝した。

保守派連合の脅威度

つまり今回の総選挙は、文の政策と文政権の現時点の実績の評価を問う「国民投票」と見なすべきだ。そこから、選挙結果を左右する3つの重要な要素が浮かび上がる。

1つ目の要素は文政権の政策の進展だ。問題は、とりわけ社会・経済分野で、これまではっきりした結果が出ていないこと。反対派が最低賃金の引き上げや企業への圧力を激しく非難する一方、当初は勢いがあった改革が今では行き詰まっているとの不満の声が支持派の間では上がる。

文政権の下、韓国は米中の貿易戦争、および日本との摩擦による深刻な打撃も受けた。その社会改革の是非については、経営者のみならず一部のブルーカラー労働者の間でも激しい論議を招いた。北朝鮮との関係に関して言えば、南北首脳会談の開催に巨額を費やしただけにすぎないと、反対派は指摘する。

一方で支持派は、これまでの3年間は政策上の優先課題を達成するための基盤づくりの期間だったと主張している。

彼らに言わせれば、文が着手した改革は一般従業員の労働条件を改善し、破綻しかけた年金制度を体系化した。また2018~19年の外交的成果で、文はアメリカと北朝鮮の指導者との交渉の土台をつくり上げたと称賛。非核化は今や主に米政府の動き次第であり、米大統領選を控えるなかで文にできるのは待つことだけだ――と彼らは擁護する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中