コロナショックの経済危機はリーマン超え
This Could Be Worse Than 2008
一方、原油価格の急落で石油収入が激減した産油国は、政府系投資ファンドの資産売却を強いられるかもしれない。そうなれば、本来なら優良資産だったものが買いたたかれて、幅広い市場に連鎖反応を引き起こしかねない。
だが、何より懸念すべき兆候は、株価と米国債の急落だ。本来なら米国債は、資金の安全な逃避先となるはずだ。その価格が下がるということは、相当な数の投資家が、必死で手元資金を確保しようとしていることを意味する。
それなのに、各国の中央銀行の対応はどこか頼りない。ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は3月半ば、ECBにはイタリアを支援する義務はないと示唆するかのような発言をして市場を動揺させた。
FRB(米連邦準備理事会)が15日に緊急決定した措置も、インパクトに欠けた。政策金利を実質ゼロにまで引き下げ、4回目の量的緩和に乗り出すというものだったが、これでは2008年の対策と基本的に同じだ。
確かに、感染症のパンデミックにぴったりの金融政策は存在しない。実際、米欧の金融当局はどちらも、これは財政政策によって対処するべき問題だと主張する。だが、たとえ中央銀行が取れるパンデミック対策は限られているとしても、信用システムそのもののリスクが高まることは阻止しなければならない。
FRBのリードに期待
今のところ世界の中央銀行には、2008年の世界金融危機で見られたレベルの連携はない。ただ、明示的な連携は必要ないかもしれない。私たちは十分な時間をかけて、世界金融危機の経験を消化してきた。その展開をよく理解して、FRBがリーダーシップを取らなくてはいけないことは、誰もが分かっている。
世界の金融市場はドルベースで動いている。それだけにFRBが15日、日本やイギリスの中央銀行と協力して、ドル資金の通貨交換(スワップ)を拡充すると発表したことは重要だった。
こうした中央銀行の世界的な協力体制に、トランプと米政権内の経済ナショナリストが異議を唱えるのではないかという懸念も、パンデミック以前は根強かった。
スワップ協定は、簡単に言えば、FRBが他国の中央銀行の要請に応じてドルを供給するものだ。「アメリカを再び偉大な国に」と気勢を上げる人々に支持される政策ではなさそうだが、自宅から出ることさえ恐れている最中に、経済ナショナリズムにこだわる余裕はないようだ。
しかし、FRBの介入も市場の売りを止めることはできず、緩和政策がさらに拡大するのか、様子見が続いている。
FRBはまず、金融機関が国債などを担保に短期資金を貸し借りするレポ市場に、緊急の資金供給を追加した。続いて、大企業が無担保の短期約束手形で資金を調達するコマーシャル・ペーパー市場にも、流動性を供給している。