取り残されたセブ島の日本人 新型コロナウイルスで封鎖のフィリピンから臨時便が日本へ
フィリピン政府は感染拡大防止策として外国人の入国は現在厳しく制限しているものの、外国人の出国に関しては可能な限りの支援をする、としている。このため、セブ島の日本人帰国問題に関してもフィリピン航空が臨時便で対応する方向で調整が進められていた。
その結果、20日に第1陣として臨時便が2機セブ島を離陸して成田空港など日本に向かった。現地からの情報では21日にも臨時便が出発する予定で、帰国を希望する日本人に最大限の対応がとられることになったとしている。
ただ民間の臨時便のため航空運賃は各自の自己負担となったとされ、現地では未確認情報として日本までの片道で約1000米ドルという高額に航空運賃が吊り上がっているともいわれている。
休校指示で英会話学校も経営の危機
一方、セブ島で英会話学校を経営する日本人の間では、コロナウイルス対策で政府が教育機関の一斉休校を決めたことや、留学生の日本引き揚げに伴って、早くも経営難が深刻な問題として浮上しており「このままでは倒産することも十分に考えられる状況だ」と話す学校経営者もいるという。
また、マニラ首都圏と同様に夜間外出禁止令が出される状況のため、語学学校経営者だけでなく、セブ島の観光業者、旅行会社、ホテル、レストランなどは非常に厳しい経営環境に直面しているという。
同様の状況はマニラ首都圏でも深刻で、事実上の「首都封鎖」で人の出入りが制限され、夜間外出禁止令も出されたため、検問所では軍の兵士も動員された厳しい監視が続いている。そのため歓楽街やレストラン、ショッピングモールなどでの商業活動は著しい影響を受けている。
こういった状況で、マニラ首都圏でも日本に帰ろうにも航空便のキャンセルや運航停止、さらにホテルの営業見合わせなどで行き場を失った日本人観光客などが少なからず足止めされ、取り残されているといわれており、新たな問題として浮上しているという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など