最新記事

インド

新型コロナウイルス、あまりに不潔で感染者も逃げ出すインドの隔離施設

In India, People Are Fleeing Quarantine Facilities.

2020年3月19日(木)16時22分
ハナ・オズボーン

隔離施設の状態も問題を深刻にしている。3月16日に首都デリーから30キロ程に位置する都市グルグラムの病院から女性が逃げ出し、私立病院に入院した。この女性は最近マレーシアから帰国したばかりで、検査で陽性が確認されていた。3月13日には、中西部の都市ナグプルの病院から感染が疑われる5人が逃亡。うち3人は見つかって病院に連れ戻された。さらに3月17日にはドバイからの帰国者11人がマハラシュトラ州の病院から脱出した。地元メディアによれば、現在は警察官が隔離病棟の警護に当たっている。

隔離施設の改善を求めて、インターネット上で署名運動も起きている。始めたのは、アメリカの大学で学び、交換留学プログラムでスペインに留学していたレア・バラ。スペインで感染が広がり、全土が封鎖されたため、インドに帰国し、空港到着後すぐに隔離された。施設の衛生状態は劣悪で、スタッフに「囚人のような」扱いを受けたという。

バラの母親は娘が送ってきた施設の画像をツイッターに上げて、改善を訴えた。当初は「文句を言うな」と嫌がらせも受けたが、すぐに同様の思いを抱いている人たちから励ましのコメントが寄せられた。

水も食べ物もない

匿名を条件に本誌の取材に応じたバラの母親は、娘が隔離されること自体はやむを得ないと思っていると話した。「感染防止が必要なことは理解している。誰であれ、感染が疑われる人には出歩いてほしくない」

「娘は空港でも酷い扱いを受けたが、そのくらいは我慢しなさいと言って聞かせた」と、母親は言う。問題はその後だ。「娘は施設の内部を写した画像を送ってきて、頼むからここから出して、と電話で泣きながら訴えた。飲料水も食べ物もなく、不衛生きわまりない。トイレも水が出ない、と」

「飲料水をくださいとスタッフに訴えると、水道の水を飲めと言われた。水道水を飲めば、病気になることはこの国では常識だ。娘と一緒に隔離された学生たちはみんな、あまりに酷い扱いに怒り狂っている」

スタッフは隔離された学生を「汚いもの」のように扱い、自分たちに近づくなと命令し、近づいたら刑務所行きだと脅した。母親がツイッターでこうした状況を訴えると、当初は「嘘つき」「非国民」などと罵るコメントが殺到した。

「でも、すぐにほかの学生たちの家族が、あなたの言っていることは嘘ではない、うちの子も同じことを訴えていると言ってきた。その人たちも、炎上を覚悟で、ツイッターで次々に実態を訴え始めた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中