最新記事

日韓関係

「ビザ無効で強制退去?」 新型コロナウイルス対策でも大もめの日韓両政府に巻き込まれた人びと

2020年3月17日(火)19時45分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

新型コロナウィルスの流行が治まれば、再びパスポートのみで行き来できるようになる?

<感染症抑止のための入国規制は、留学生からK-POPアイドルにまで影響が......>

今月5日から6日にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした入国制限処置をめぐり、日韓関係が大きく揺れた。そして、その揺れは波となり様々な場所に広がっている。

日本政府は今月5日、新型コロナウイルス感染拡大の水際対策として、3月9日0時から中国と韓国からの入国を制限すると発表した。これにより、発行済みのビザも無効となり、90日以内のビザなし滞在もできなくなってしまった。たとえ入国できたとしても14日間の隔離を要請するという。日本外務省の発表によると、韓国人が既に取っていたビザ約17,000件が停止になったと発表している。

日本政府からの発表が行われた翌日6日、日本の入国規制に猛反発した韓国は、対抗処置として日本の措置と同じく、発行済みビザ効力無効と90日間のビザ免除の停止処置を行うとし、適用開始日は日本と同日時と発表した。

「今更時期が遅すぎではないのか?」「韓国からの入国規制は他国も行っているのに、なぜ日本にだけ対抗処置をとるのか?」など、ネット上ではこの対応を疑問視する意見が両国で飛び交った。さらに、執行日の9日、入国制限強化がスタートしたと思ったら、今度は「事前通達した」「いや聞いてない」という食い違いの主張が水掛け論になっている。

近くて遠い国だったはずの両国が、一歩ずつ進んだりまた後退したりしながら、徐々にではあるがここ10年でかなり距離を縮めたと思っていた。しかし、いざ
何か問題が起きるとまたいつもの状態に逆戻りだ。

翻弄される在韓日本人

このような問題が起きた時、一番に振り回されるのは韓国に在住している日本人たちだろう。筆者も韓国に在住していた頃は日韓で問題が勃発するたびに、何か起きるかと身構えたものだ。

まず、ビザの効力停止の一報を聞いた一部の在韓日本人が混乱し始めた。SNS上では、国際結婚や留学生など、ビザで滞在し生活している人たちの間で「日本に強制帰国になるかも」などというデマが流れ出した。もちろん、これは一部の人たちであり、大部分は「いや、まさかビザの無効と言っても既に入国している人は強制退去にならないだろう」と冷静な反応だった。

また既に入国し韓国に住んでいる日本人は強制退去にならないとしても、日本へ一時帰国していた人の再入国はどうなるのか? これも不安を募らせていた人が多かったようだが、外国人登録証を所持しているなら問題なく再入国可能という。

このような細部の規定は入国規制強化が発表された時にははっきりしていなかったために、内心ひやひやしながら問い合わせた日本人も多かったようだ。

ただし、運悪く外国人登録証をまだ受け取っていなかった人や、留学ビザでの韓国入国前だった人は残念ながらしばらく韓国に入国することはできなくなってしまった。特にこの時期は新学期シーズンだったため、新入生として留学準備していた人たちの中には、入国を見合わせざるを得ない人も多かったようだ。実際、韓国外語大学は、今学期から交換留学生として迎えるはずだった日本人11人の留学中止を発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中