動物から人にうつる未知のウイルスの出現を止められない訳
THE END OF THE WILD ANIMAL TRADE?
野生動物を使った製品は中国人に人気があるため、これまで中国政府は取引の規制に及び腰だった。02年から03年のSARS禍ではハクビシンなど54種の動物の販売を禁止したものの、流行が終息したとみるや、即座に禁止措置を撤廃。
その後04年1月に広東省で新たな感染者が発生すると、ハクビシンやタヌキ、ネズミなど野生動物1万頭の大量処分を命じた。そのため一時は野生動物がヤミ市場で取引されるようになったが、ほとぼりが冷めると再び公然と売られるようになった。
中国でも絶滅危惧種の輸入は違法だが、飼育された動物の取引は合法だ。今回の新型ウイルスの大流行では、さすがに中国当局も早々に手を打ち、野生動物の飼育と消費を全面的に禁じたが、この措置がいつまで続くかは分からない。
「人々の間に不安が広がっているので、1、2年は野生動物の取引が規制されるだろうが、こうした食習慣は文化に根差したものだから、それも長続きしないだろう」と、環境保護団体エコヘルス・アライアンスのピーター・ダザック代表はみる。
つまり、野生動物の取引を完全にやめさせるには、今のうちに手を打つ必要がある、ということだ。
自然保護団体などは長年、あの手この手で野生動物の取引規制を訴えてきた。動物の残酷な扱いや生態系の破壊を訴えれば多くの人は規制が必要だと認めるが、買い手はそんなことにはお構いなしだ。
「動物保護の必要性は50年も前から分かっているのに市場はなくならない」と、ダザックは言う。「市場を閉鎖に追いやった要因はただ1つ、パンデミックの脅威だけだ。かつてのSARS、そして今回のウイルスもそうだ」
一方で、いくら規制しても違法ルートでの取引や密猟はなくならない、との声もある。まともな雇用がない貧しい奥地では、たとえ逮捕されるリスクがあっても密猟で稼ごうとする者が後を絶たないからだ。