最新記事

新型コロナウイルス

動物から人にうつる未知のウイルスの出現を止められない訳

THE END OF THE WILD ANIMAL TRADE?

2020年3月12日(木)15時00分
リンジー・ケネディ、ネイサン・ポール・サザン

おまけにトラなど絶滅が危惧される動物は合法的に飼育する施設があるため、買い手は商品が合法か違法かを判断しにくい。またこうした施設は管理がずさんなため、種を超えた感染が起こりやすい。SARS禍を引き起こしたハクビシンは、野生ではなく飼育された個体だった。

近年では、テロ組織の資金源になっているとして、野生動物の違法取引を取り締まる動きもある。このアプローチは国際社会の関心を引く利点があるが、各国政府が軍隊や警察を動員して規制を行っても、違法取引の根本的な原因は取り除けない。

結局のところ買い手がいる限り、取引はなくならないのだ。「需要があれば、供給側は何とかしてそれを満たそうとする」と、ベン・エンベレクは言う。「人々の意識を変えなければ」

長期的に見れば野生動物の違法取引は下火になるかもしれない。エコヘルス・アライアンスの調査で、中国の若年層はさほど野生動物を食べたがらないことが分かっている。だが世代交代を待っている間にも野生動物は絶滅に追い込まれるし、人獣感染症が世界を脅かす状況は続く。

人類はこれまで何度もパンデミックの脅威にさらされながら、幸運にも生き延びてきた。過去にはペストのように致死率が高く、感染力も強い細菌が猛威を振るった。幸いにも今では抗生物質のおかげで細菌による感染症はさほど怖くない。

ウイルスは厄介な敵だが、これまで大規模な集団感染は中国のようなある程度の医療設備が整った国か、ギニアの農村部のように人とモノの往来が激しくなく、感染が広がりにくい場所で起きるケースがほとんどだった。

WHOが「疾病X」と呼ぶ未知の人獣感染症が世界的なパンデミックを引き起こすのは時間の問題だと、専門家は警告してきた。新型コロナウイルスはまさにその疾病Xかもしれない。そうでなくても、今の状況では第2、第3の新型ウイルスの出現は避けられないだろう。

過去にも奥地の村々で未知のウイルスが短期間暴れていたかもしれないが、それは今ほど人の往来がない時代の話だ。今や年間に約4000万便もの商用フライト(20年推計値)がウイルスを世界の隅々に運ぶ。

「人間と野生生物の関係を見直し、野生生物をそのすみかである奥地にそっと残しておくべきではないか」と、ダザックは言う。「そうすればウイルスをもらう心配もない」

From Foreign Policy Magazine

<2020年3月17日号「感染症vs人類」より>

【参考記事】ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実
【参考記事】新型肺炎ワクチン開発まで「あと数カ月」、イスラエルの研究機関が発表

20200317issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症VS人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国コスコの船舶がホルムズ海峡通過、2度目の試み 

ビジネス

金融政策「良い位置」、イラン情勢の影響見極めへ様子

ビジネス

米FRB議長、新卒者の長期的な雇用見通し楽観視 A

ワールド

エジプト大統領、トランプ氏にイラン紛争停止訴え 原
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 9
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中