最新記事

感染症

「感染は神のみぞ知る、心配無用」 新型コロナウイルス感染4人になったインドネシア

2020年3月8日(日)11時23分
大塚智彦(PanAsiaNews)

感染者が確認されてからジャカルタ市内では通勤電車の乗客にマスクが配布されるように。Willy Kurniawan - REUTERS

<初の新型コロナウイルスの感染者は日本人経由──。このために日本人への差別が起きていると言われるインドネシアだが......>

新型コロナウィルスの感染が長くゼロだったインドネシアは3月2日に初めて国内でインドネシア人の感染者2人が確認され、その後7日までにさらに2人増えて感染者が4人となった。周辺国で感染者や死者の報道が相次ぐなか、「高みの見物」を続けてきたインドネシアだけに初の感染者報道で一気に感染防止対策が広まり、一時パニック状態となったが、次第に落ち着きを取り戻し、圧倒的多数を占めるイスラム教徒の間では「感染するかしないかは神のみぞ知る」という楽観論も支配的になっているという。

インドネシア政府が初感染者のインドネシア人母娘がマレーシア在住の日本人女性から感染した可能性が高いことを発表したため、インドネシアでは日本人に対する差別が広がっているとの情報があり、在インドネシア日本大使館は7日までに「日本人に対する悪質な嫌がらせ等の行為に関する在留邦人向けの相談窓口」を設置した。

これまでに在留邦人の間では日系企業でインドネシア従業員から「日本人はマスクを着用してほしい」などの要求や面会のアポイントメントが急にキャンセルされるなどの事態が起きているとの情報が流れている。さらに主要なオフィスビルやホテルなどでは入り口で簡易体温検査が実施され、マスク姿のインドネシア人が増加していることも事実である。

買い占め、品切れも特定商店に限定

ティッシュペーパーやトイレットペーパーが品薄になっているのも事実で「購入個数制限」や品切れ状態も報告されているが、主に富裕層が訪れる高級大型スーパーや日系スーパーが中心で市中の普通のコンビニエンスストアーなどでは品薄も品切れも起きていない。

つまり日本などからの「買い占め騒動」のニュースを知った一部富裕層と在留邦人が買い占めに走っているだけで、一般のインドネシア人の間ではそうした事態はこれまでのところ起きていないとみられる。ただ、マスクだけは通常のコンビニや薬局でも品切れや品薄状態が続いているのは間違いない。

携帯電話のアプリで呼ぶタクシーやバイクなどでの日本人の乗車拒否も伝えられるがそれはあくまで一部の極端な例で、筆者が利用したアプリ配車の運転手は日本人とわかっても別に普段通りの対応で「新型コロナウィルスに感染するかどうかは神の思し召し次第、感染したらその時はその時です」と話し、マスクも着用していなかった。

大半のインドネシア人はこういった感じで、ジョコ・ウィドド大統領も国民に必要以上の不安感を与えないよう配慮しているのか、テレビに登場する時もマスクは基本着用していない。

ジョコ・ウィドド大統領の母体である最大与党「闘争民主党(PDIP)」の幹部もマスクは非着用で日本人とも普段通りに接し、握手に関しては冗談で「そうか握手はよくないのか」とテレビなどで伝えられている足先を交互に接する「握手ならぬつま先タッチ」を笑いながらしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中