人気の大統領だったのにオバマの命名運動が振るわない理由
THE PRESIDENTIAL NAMING GAME
オバマの伝記を書いたデービッド・ギャローによると、右派にとってのレーガン同様、オバマも左派にとってはアイコン的な存在だが、退任後の事情の違いがそれぞれの伝説づくりに影響を与えているという。レーガンの場合は、副大統領だったブッシュ父が後を継いだおかげで、業績が汚されることもなく、ノークイストら支持者はその名を残す運動に専念できた。
一方オバマは、共和党の大統領であるドナルド・トランプが通称オバマケア(医療保険制度改革法)からイランの核合意まで、オバマの業績を全てひっくり返すことに執念を燃やしている。ヒラリー・クリントンが大統領選に勝っていたら事情は違っただろうと、ギャローは言う。
レガシーづくりに無関心?
ノークイストもそれを認めつつ、レーガンの場合は退任後にアルツハイマー病を公表し、公の舞台から退いたことも大きいと指摘する。オバマは今後まだ数十年、一定の影響力を持ち続ける可能性がある。公人としてのキャリアが終わったら「共和党も民主党も改めてその業績を振り返って評価し、その名を残そうという気になる」が、オバマは終わっていない、というのだ。
もっともこの説が当てはまらないケースもある。昨年11月にはトランプが「アメリカ史上最も著名な大統領の1人となるのは間違いない」として、旧国道ルート66の一部区間にその名を冠する法案がオクラホマ州議会に提出された(後に撤回)。また2012年にはアーカンソー州リトルロックの空港にクリントン夫妻の名が付けられたが、このときまだヒラリーは国務長官で、4年後に大統領選に出馬している。
オバマの場合は、神格化の拠点となるべき記念図書館が物議を醸したこともマイナスになった。レーガンもブッシュ父子も、クリントンも、退任後にその名を冠した図書館が鳴り物入りでオープンしている。記念図書館の開館式は、退任後の大統領が政治の領域から歴史の領域へと移行するための重要なセレモニーだ。
だがオバマは別のモデルを選んだ。伝統的な大統領図書館のような国立公文書館との正式なつながりのない、約7万7000平方メートルの「オバマ大統領センター」をシカゴ市内の公園で独自に運営する予定だ。ただ、実際の大統領の記録の所蔵ではなく、3000万ページに及ぶ非機密文書をデジタル化してオンラインで利用できるようにするという。さらに次世代のリーダー育成という「オバマの政治運動」にも公共エリアが使われるとの批判から、市民団体がシカゴ市を提訴。センターの着工のめどは立っていない。
一方、レーガンのレガシープロジェクトは万事順調。自分たちはルールを心得ているから相談されればアドバイスできる、とノークイストは言う。