人気の大統領だったのにオバマの命名運動が振るわない理由
THE PRESIDENTIAL NAMING GAME
命名運動は大統領のレガシーを確固たるものにするために重要だと、専門家は言う。1998年にワシントン・ナショナル空港がレーガンにちなんで改称されたという事実は、第40代大統領が偉人として公的に承認されたことを意味する。「レーガンの支持者がレガシーの確立に力を入れた結果、未来の人々の見方に影響を与えている」と、政治的ブランド構築についての著作が多数あるステットソン大学(フロリダ州)のシアラ・スペリスキー教授(法学)は指摘する。
ノークイストも同意見だ。「子供たちが親に向かって『どうしてレーガン空港なの?』と年に10万回尋ねれば、そこから会話が生まれ、学びの機会になる」
ニュースサイト「ポリティコ」の共同創設者ジョン・ハリスも、右派がレーガンの神格化に成功したのとは対照的に、左派はオバマの業績をアピールすることに失敗したと論じている。「ある世代の保守派は歴史が権力強化に役立つことを認識し、レーガンの業績をたたえ、命名運動に多大な労力を注ぎ込んだ」
それに比べて民主党は後世に語り継がれるオバマ伝説をつくる努力を放棄していると、ハリスは指摘する。
実際、ノークイストの精力的な運動は現代ではほかに例を見ない。ビル・クリントンの名を冠した最も重要な建物はワシントンの米環境保護局本部。「ビル・クリントン通り」はアメリカでは彼の生誕地アーカンソー州にあるだけだ。ただしコソボにも1カ所、この名の通りがある(独立支援に感謝して命名された)。
ブッシュ父の名を冠した重要な建物にはCIA本部ビルやヒューストンの空港などがあり、息子の名を冠した小学校はカリフォルニアやテキサス州にある。
レーガンの名を冠する運動も1990年以降はやや下火になり、ラスベガス近郊の山をレーガン山とする運動は民主党の反対で頓挫した。それでも引き続き成果は上がっている。2016年にはカンザス州ウィチタの内国歳入庁(IRS)支部の建物にレーガンの名が付いたし、昨年11月にはベルリンの壁崩壊30周年を記念して、在ベルリン米大使館にレーガン像が設置された。フロリダ州だけでもレーガン通りが6本もある。
さらに毎年2月6日のレーガンの誕生日が近づくと、ATRのレガシープロジェクトは全米の州知事にこの日を「レーガンの日」とする旨の公告を行うよう手紙を送る。手紙には各州の実情に合わせた公告文のひな型まで添えてあり、「今年も40州くらいが応じてくれるだろう」と、ノークイストは事前に話していた。