インドネシアも新型コロナウイルスに陥落 マレーシアの日本人から感染、移動経路など追跡へ
マスク買い占め、値段は10倍
インドネシア在留邦人の間にはいち早く「初の感染者確認」のニュースがSNSなどを通じて伝わり、今回感染者が確認されたデポックに住む日本人は「数日は外出を控えたい」と話すなど「日本人からの感染の可能性」という報道に敏感に反応している。
ジャカルタ市内の薬局やスーパーからマスクが消える状況は日本と同じだが、一部の業者が買い占めて価格を引き上げて特定の場所で販売しているといわれている。
その"特定の場所"といわれるジャカルタ東部の市場でマスクを購入した日本人によると、市内で通常1箱50枚入りが3万ルピア~5万ルピア(約240円~約400円)で販売されていたものが30万ルピア(約2400円)と最高で10倍の値段が付けられていたという。
在留日本人の中には近く日本に一時帰国するに際して日本の家族や知人から「不足しているマスク、ティッシュペーパー、トイレットペーパーを購入してきてほしい」と要望が届いているという。
インドネシアではマスクは普通のスーパーやコンビニ、薬局の店頭から姿を消しているが、ティッシュペーパーやトイレットペーパーは品切れも買い占めも起きていない。
しかし、2日に初の感染者が報道されたことに加え、日本では「原料が同じ」という情報に基づいてティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパーなどが買い占められ店頭から消える事態になっているとのニュースが伝えられていることから、今後同じようなパニックがインドネシアで起きて品切れや価格高騰になるとの懸念もでている。
日本人女性がどこで感染したか
インドネシア保健当局はマレーシアで感染が確認された日本人女性のインドネシア国内での詳細な行動、接触した人の特定を急ぐ一方、この日本人女性がどこで感染したのかの特定を急いでいる。1月の日本一時帰国の際は潜伏期間からして可能性は少ないとされ、マレーシアかインドネシアのいずれかでの感染が疑われているが、依然として感染経路は判明していない。
日系クリニックなどではインドネシア人に対するインドネシア語による注意喚起をこれまで以上に積極的に発信することで、これまでと同じように手洗い実行、マスク着用などで感染の可能性を少しでも低減することに務め、いたずらにパニックに陥らず冷静に対処することを伝えていきたいとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。