最新記事

感染症

インドネシアも新型コロナウイルスに陥落 マレーシアの日本人から感染、移動経路など追跡へ

2020年3月2日(月)20時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

マスク買い占め、値段は10倍

インドネシア在留邦人の間にはいち早く「初の感染者確認」のニュースがSNSなどを通じて伝わり、今回感染者が確認されたデポックに住む日本人は「数日は外出を控えたい」と話すなど「日本人からの感染の可能性」という報道に敏感に反応している。

ジャカルタ市内の薬局やスーパーからマスクが消える状況は日本と同じだが、一部の業者が買い占めて価格を引き上げて特定の場所で販売しているといわれている。

その"特定の場所"といわれるジャカルタ東部の市場でマスクを購入した日本人によると、市内で通常1箱50枚入りが3万ルピア~5万ルピア(約240円~約400円)で販売されていたものが30万ルピア(約2400円)と最高で10倍の値段が付けられていたという。

在留日本人の中には近く日本に一時帰国するに際して日本の家族や知人から「不足しているマスク、ティッシュペーパー、トイレットペーパーを購入してきてほしい」と要望が届いているという。

インドネシアではマスクは普通のスーパーやコンビニ、薬局の店頭から姿を消しているが、ティッシュペーパーやトイレットペーパーは品切れも買い占めも起きていない。

しかし、2日に初の感染者が報道されたことに加え、日本では「原料が同じ」という情報に基づいてティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパーなどが買い占められ店頭から消える事態になっているとのニュースが伝えられていることから、今後同じようなパニックがインドネシアで起きて品切れや価格高騰になるとの懸念もでている。

日本人女性がどこで感染したか

インドネシア保健当局はマレーシアで感染が確認された日本人女性のインドネシア国内での詳細な行動、接触した人の特定を急ぐ一方、この日本人女性がどこで感染したのかの特定を急いでいる。1月の日本一時帰国の際は潜伏期間からして可能性は少ないとされ、マレーシアかインドネシアのいずれかでの感染が疑われているが、依然として感染経路は判明していない。

日系クリニックなどではインドネシア人に対するインドネシア語による注意喚起をこれまで以上に積極的に発信することで、これまでと同じように手洗い実行、マスク着用などで感染の可能性を少しでも低減することに務め、いたずらにパニックに陥らず冷静に対処することを伝えていきたいとしている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など



20200310issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ミサイル防衛「ゴールデン・ドーム」、スペースXが

ビジネス

エクイノール、NY州沖風力発電施設の建設中止 米政

ワールド

中国主席がカンボジア入り、歴訪最後も「保護主義」反

ワールド

中国、米に相互尊重を要求 貿易交渉の開始巡り膠着続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 7
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中