新型コロナウイルスがアベノミクスの息の根を止める
Japan’s Economy May Be Another Coronavirus Casualty
政府のコロナウイルス対策専門家会議の副座長で、独立行政法人地域医療機能推進機構の理事長である尾身茂は、完全なシステムなどは存在しないし、日本も例外ではないと語る。当局者らは24時間態勢で対応に当たっており、さらなる集団感染を防ぐとともに死亡率を下げることに全力を挙げているとも語った。
日本の対応が成功するかどうかは分からない。だが、人はもちろん経済が、新型コロナウイルスの大きな痛手を被ったのは間違いない。
コロナ問題が起きる前から日本は景気後退の入り口にいた。10〜12月期のGDPは、消費増税の影響により年率換算でマイナス6.3%だった。
新型コロナウイルスの感染拡大が、こうした状況をさらに悪化させることはほぼ間違いない。ゴールドマン・サックスは1〜3月期のGDPは前期比マイナス0.3%で、今年1年を通しての成長率はマイナス0.4%になると予測している。
2月25日に政府が発表した対策基本方針は、景気をさらに悪化させることになりそうだ。新たな集団感染を防ぐため、政府は多くの人が集まったり、互いに濃厚接触するようなイベントを当面、見合わせるよう呼びかけている。企業がパーティーの開催を中止するなか、ろうそくに照らされたおしゃれなディナーも職場の仲間との飲み会もお預けだ。
レストランは閑古鳥、テーマパークは閉園
多くの大企業も政府の指示にならっている。大手広告代理店の電通は、社員1名が新型コロナウイルスに感染していたことを受けて本社の5000人の従業員を在宅勤務にした。化粧品大手の資生堂も8000人の従業員に在宅勤務を命じた。大手企業の中には、6人以上での集まりをやめるよう命じたところもあれば、すべての出張を取りやめたところもある。
経済への影響は日増しに大きくなっている。日経平均株価は2月の最後の週、9.6%も下げた。ある大手の国際ホテルチェーンでは客室稼働率が通常の半分にあたる40%まで落ち込んでおり、さらに下がる見込みだという。東京都心にあるレストランの中には、予約が通常の半分にまで減ったところもあるという。サッカーのJリーグは15日まですべての試合を中止、東京マラソンは一般参加者抜きで行われるなど、スポーツ界にも自粛の動きがでている。世界有数の人気テーマパークである東京ディズニーランドも少なくとも2週間の閉園を決めた。
消えたインバウンド
こうした状況から、アベノミクスにとって大きな成功要因の1つであったインバウンド観光が最大の被害を受ける可能性がある。昨年、訪日外国人旅行者全消費額の40%を占めた中国人観光客は、団体旅行が禁止されたため、日本から姿を消した。
昨年、貿易優遇措置の除外をめぐってすでに日本に腹を立てていた韓国からの観光客も大幅に減少した。この二国からの旅行客は、約3200万人に達した昨年の訪日外国人旅行者総数のほぼ半分を占めていた。
また、伝染病の世界的大流行となればオリンピックの開催そのものが危ういが、開催されるにしても東京はその舞台に適しているのかという疑問もささやかれている。
国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員(カナダ)はAP通信に、状況を評価判断するために2〜3か月様子を見る可能性が高いと語った。
このコメントに対して東京都の報道担当者は、少なくとも今のところ、「IOCによれば、この委員の発言は公式な見解ではなく、予定通りオリンピック開催に向けて準備を進めている、ということだ」と、語った