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中国人全面入国規制が決断できない安倍政権の「国家統治能力」

2020年3月2日(月)11時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

それでも日本での新型コロナウイルス肺炎患者が激増していくのを受けて、2月12日にやっと浙江省を入国規制対象に加えた。中国では全土に新型肺炎患者が分散しているので、浙江省などを一つ加えてみたところで如何なる役にも立たないことは2月23日付のコラム<国民の命は二の次か? 武漢パンデミックを後追いする日本>で述べた通りだ。

次に2月25日に、新型肺炎のさらなる感染拡大に備えた対策の「基本方針」を日本政府は発表したが、驚くべきことに、事ここに至ってもなお、安倍首相は中国からの全面的な入国禁止に踏み切ることをしていない。これはつまり、湖北省と浙江省以外からの中国人は、空港で自動的にチェックされている体温測定にでも引っかからない限り、自由に日本に入国できることを意味する。個人観光は言うに及ばず、春節を終えて日本の大学に戻ってくる中国人留学生や新たに日本の大学を受験する中国人受験者をどうするかに関しても、大学が各自判断するという、現場の「自己責任」に押し付けているのである。もちろん日本の入管が一律、再入国あるいは新規入国を不許可にするということもしないのが日本だ。

期待した「基本方針」は、日本人が日本における集まりや勤務あるいは通学、受験などに関しても、各組織が判断するという「自己責任」を日本国民に押し付けただけに終わった。

「自己責任」にしながら検査はしないというあり得ない現状に対する国民の不満が噴出すると、今度は大学を除いた教育機関の一斉休校を突然言い出すなど、とても「国家の統治」が成されているとは思えないような「行き当たりばったり」の右往左往を続けている。習近平への忖度の方を重んじて、最も感染源として警戒しなければならない中国各地からの入国に対しては規制をかける勇気がないのである。

2月20日のワシントン・ポストも"Critics said Abe appeared keener to avoid offending China ahead of a visit by President Xi Jinping planned for April than tackling the problem head on."(「安倍は目の前にある差し迫った問題に取り組むよりも、4月に計画されている習近平の訪日を前にして、ともかく中国を不愉快にさせてはならないと必死なのである」と多くの評論家が言っている)と書いているくらいだ。

アメリカのメディアにも、ちゃんと見透かされているではないか。

習近平との蜜月を演じてきたロシアのプーチン大統領でさえ、自国民を守るためには「中国人を一切入国させない」という、アメリカ並みの冷徹な手段を断行しており、軍事同盟がある北朝鮮もまた、中国人入国を禁止している。

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