新型コロナウイルス感染症はいつ、どう終息するのか
Can Coronavirus Be Stopped and How Have Other Pandemics Ended?
オクスフォード大学「人類の未来研究所」の上級研究フェローでパンデミックの専門家ピアーズ・ミレットは本誌に、「WHOは既に現在の流行の危険度を最高レベルに引き上げている。公衆衛生上はパンデミックかどうかより、こちらのほうがはるかに重大だ」と語った。
パンデミックかどうかに関わりなく、過去の事例から、新型の病原体は短期間に急速に広がるか、長期にわたってじわじわと広がるか、いずれかのパターンを取ることが分かっていると、ミレットは言う。短期型は致死率が非常に高いため、感染の拡大は抑えられる。一方、長期型は「膨大な数」の感染者が出るものの、死者は比較的少ない。
チューによれば、新型の病原体は「ある時点で人口のかなりの割合が免疫を持つようになり、感染拡大に歯止めがかかる」のが通常のパターンだが、封じ込め策も流行を終わらせる効果がある。
史上最多の死者を出した1918年のスペイン風邪は、感染者が死ぬか、免疫を獲得し、ウイルスがとりつく新たな宿主がほとんどいなくなった時点で終息した。1957年のアジア風邪はワクチンが早期に開発され、抗生物質で合併症が抑えられ、一部の人たちが免疫を獲得したことがあいまってコントロールできる状態になった。
ウイルスの生存戦略
2003年のSARSでは774人の死者が出たが、感染地域の封鎖や感染者の隔離など封じ込め策の効果もあって終息した。SARSは初期における診断が比較的簡単で、地理的に封じ込めが可能だったことが幸いしたと、チューは言う。
しかし病原体が多くの国に広がり、感染が拡大すると、封じ込めでは感染を阻止できず、せいぜい拡大のスピードを抑えることしかできなくなると、チューは指摘する。「それでもピーク時の山の高さを抑えることで、感染者が病院に殺到して医療が崩壊する事態を防ぐ効果は期待できる」
ミレットによれば、新型コロナウイルスは今のところ、動物から人にうつった新型の「攻撃的なウイルス」に典型的な振る舞いをしているという。
「ウイルスの立場からすれば、宿主を殺せば増殖できなくなり、存続できなくなる。うまく適応したウイルスは、宿主を病気にしても殺さない。COVID-19も動物由来のウイルスであれば、今後数週間に新しい宿主に適応するにつれて、症状の重篤さが和らぎ、流行の猛威は収まっていくと考えられる」