最新記事

中国

中国の巨大タンカー84隻が一斉にペルシャ湾めざす

2020年3月20日(金)22時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国・寧波に停泊した大型の石油タンカー(2017年5月16日) REUTERS

3月17日、中国の原油輸送巨大タンカー84隻が一斉にペルシャ湾に向かった。原油価格の暴落を受け爆買いするためだ。サウジとロシアの破談で狂喜する中国の浅ましいまでの動きを「モスクワ情報」を交えながら追う。

原油先取りのために一斉に動いた84隻のVLCC

3月16日夜半から17日明け方にかけて、中国のネットはざわついた。中国全土の港に横付けされているVLCC(Very Large Crude Oil Carrier:原油輸送を主な目的とする大型タンカーのうち、20万~30万トン級のもの)が一斉に錨をあげ一ヵ所に集まってペルシャ湾に向かったからだ。

たとえばこちらのページをご覧いただきたい。それによればサウジアラビアの原油価格が30%も暴落したので中国政府が16日に指示を出し、VLCC船隊をペルシャ湾に面するサウジアラビアの港に向かって一斉に直航させたのだという。

この船隊なら、一往復で1.68億バレルの原油を運ぶことができる。

もっとも中国の石油消費量は1日あたり1,279.9万バレルなので、1.68億バレルあったとしても10日間ほどの量でしかないが、ともかくこのチャンスを逃すことはあり得ないという勢いだ。

原油価格暴落の背景には、サウジアラビア(OPEC)とロシアの破談(協調決裂)がある。両国は3年前から協調して原油価格を60ドル前後で維持してきたが、新型コロナの蔓延で世界経済が落ち込むのを見て、サウジアラビアは生産の縮小を提案したが、ロシアが同意せず、破談になったという。

「モスクワの友人」からロシアのナマ情報

ロシアが絡んでいるのなら、プーチン大統領の側近とも接触のある「モスクワの友人」に内部事情を教えてもらうのが一番早い。

そこで早速お聞きしたところ、以下のような返事を頂いた。

――本件は減産合意できず、破談となったという理解で良いと思います。いずれの国も、経済的利害よりも政治的利害、内政問題と独自の外交政策というところで、突っ張り合いをしてしまった、ということかと。

サウジの石油大臣はじめテクノクラートは、破談は自らの首を絞めるばかりかOPECそのものを破壊させかねないとして反対したでしょうが、独裁者となりつつある皇太子は各国との協調というタイプではなく、一方、ロシアも民間最大手のLUKOILなどは、これで1日3億ドルの外貨収入を失い、1ヵ月100億ドル(約1兆円)をロシアはドブに捨てることになったと批判しています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中