最新記事

韓国

アカデミー受賞に沸いた韓国映画界に新型コロナが打撃 ファンは感染パニック映画を自宅観賞

2020年2月23日(日)21時35分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

新型コロナウイルスの大規模感染でひと気の少なくなった大邱の繁華街 REUTERS/Kim Hong-Ji

<ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞に沸き立った韓国映画界が、新型肺炎の拡大で新作公開の延期などが続いている>

全世界が新型コロナウイルスのパニックに陥っている。連日ニュースで大きく取り上げられているように、日本で横浜港のクルーズ船から乗客の下船が開始され、ホッとしたのもつかの間、日本各地で感染者が出始めた。さらに、お隣りの韓国ではこの1週間ほどで一気に感染が広まり、初めは数十人単位で数が増えていたのが、ついに百人単位の増加となって国民は驚きを隠せないでいる。

そもそも、今回の新型コロナウイルスの感染が中国以外に拡大しはじめた頃、韓国は日本よりも感染者が少なく安全だと思われていた。迅速な対策はもちろん、感染者の情報公開もクレジットカード会社からの情報提供で「何時にどこで何を食べ、その後どの交通機関で移動しどこへ向かったか」など、個人情報ともいえるレベルで移動経路が公開されたことには驚かされた。これはまさにキャッシュレス化の進んだ韓国社会の賜物といえるかもしれない。

しかし、この安全神話も20日大邱地方の大規模集団感染を皮切りに崩れてしまった。しかも、それが、新興宗教である「新天地イエス教会」のたった一人の女性から拡散されたことが公開されると、韓国国民の怒りは今、一気にこの宗教へ向けられている。

韓国メディアの報道によると、61歳の女性が交通事故で病院に搬送された際、新型コロナウイルスと疑わしい症状が出ているため入院していたが、自ら病院を抜け出して宗教活動を続けていた。それが感染拡大につながったのだろうと発表されている。これが本当なら、一人の身勝手な行動で大規模感染が起こったことになり、韓国国民の怒りは当然だろう。25日夕方には新天地イエス教会がYouTubeで声明を発表。自分たちはあくまで被害者であり、政府と保健当局に積極的に協力をしており、いわれのない嫌悪と非難を自制するよう呼びかけている。

さて、韓国関連の話題といえば、今月10日(日本時間)に発表された第92回アカデミー賞で「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」をポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が受賞したことが記憶に新しい。その後『パラサイト』は上映中の日本でも客足が急増。10月から上映されていたアメリカでは、すでにノミネート発表時点で1060スクリーンまで上映館数が伸びていたが、受賞決定後さらに配給され2000以上のスクリーンで公開されることとなった。

韓国映画の歴史を大きく塗り替えることとなった『パラサイト』のニュースは、韓国で大いに盛り上がり、連日大きく取り上げられていた。このまま韓国エンターテイメント業界は更なる勢いを増すと思われていた矢先、この新型コロナウイルスの大規模感染は映画業界に直撃を食らわせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中