最新記事

韓国

アカデミー受賞に沸いた韓国映画界に新型コロナが打撃 ファンは感染パニック映画を自宅観賞

2020年2月23日(日)21時35分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国のアカデミー賞「大鐘賞映画祭」が延期に

現在、韓国内で多くのイベントやコンサートが開催延期、もしくは中止を発表しているなか、本来なら今月25日に開かれる予定だった「第56回大鐘賞映画祭」も延期を余儀なくされた。1962年に創設された大鐘賞映画祭は、韓国のアカデミー賞と称されるほど権威のある映画賞と言われている。まだ再開催の日時は公式発表されていないが、関係者の話によると遅くても3月末には行われる予定だ。

大規模感染が始まった大邱地方のある映画館も、すでに無期限休館を発表している。インディーズ映画専門のアート系映画館「55(オオ)劇場」だ。韓国映画界は急成長を見せ、ビジネスとして成り立っているように見えるがそれは商業映画の話で、インディーズ系の映画関係者はどこも同じく苦しい生活を強いられている。韓国は世界的にはインディーズ系映画に対して行政の支援などが行われている方ではあるが、それでも短編映画やインディーズ映画の監督・スタッフらは、撮影の傍らアルバイトなどをしつつ、やっと生計を立てられている状態だ。それでも上映する専門の映画館があることが彼らの創作意欲に繋がっている。この休館期間に上映を予定していた作品もあっただろう。このようなインディーズ業界から、次の韓国映画界を担う第二のポン・ジュノが誕生していくのである。感染の終息とともに、アート系映画館の早期の再開を願わずにいられない。

たしかに映画館は、密閉した空間に数時間滞在し、しかも隣同士席が近いこともあり、感染の拡大にはもってこいの空間だと言える。しかも、今回のように外出すら控えようとしている状態で映画を見に行こうという気持ちにはならないかもしれない。コロナの影響で公開日に影響が出た作品がある。今月5日公開予定だった『The Stolen Princess』は、3月19日に公開が延期され、26日公開予定だった映画『Turu: the wacky hen』は、公開無期限延期となった。両作品とも子供向けアニメーションであるため、子供たちの感染予防に配慮したようだ。

また、公開前から盛大に宣伝していた韓国の大作映画『藁にもすがる獣たち』も、本来なら12日封切予定だったが、1週間延ばし19日に公開変更された。奇しくも変更された公開翌日20日には大邱の大規模感染が発表されてしまい、幸か不幸か公開日変更が逆効果となってしまったが、そのなかでも観客動員数は1位となった。一方、26日から公開予定だった『狩猟の時間』は公開延期を発表した。それと共に、25日のプレス試写及び全ての一般試写、舞台挨拶の中止を公式発表している。また、3月5日公開予定の『潔白』も試写会や出演者へのインタビューのキャンセルを発表、公開日延期も検討している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中