アカデミー受賞に沸いた韓国映画界に新型コロナが打撃 ファンは感染パニック映画を自宅観賞
新型コロナウイルスの大規模感染でひと気の少なくなった大邱の繁華街 REUTERS/Kim Hong-Ji
<ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞に沸き立った韓国映画界が、新型肺炎の拡大で新作公開の延期などが続いている>
全世界が新型コロナウイルスのパニックに陥っている。連日ニュースで大きく取り上げられているように、日本で横浜港のクルーズ船から乗客の下船が開始され、ホッとしたのもつかの間、日本各地で感染者が出始めた。さらに、お隣りの韓国ではこの1週間ほどで一気に感染が広まり、初めは数十人単位で数が増えていたのが、ついに百人単位の増加となって国民は驚きを隠せないでいる。
そもそも、今回の新型コロナウイルスの感染が中国以外に拡大しはじめた頃、韓国は日本よりも感染者が少なく安全だと思われていた。迅速な対策はもちろん、感染者の情報公開もクレジットカード会社からの情報提供で「何時にどこで何を食べ、その後どの交通機関で移動しどこへ向かったか」など、個人情報ともいえるレベルで移動経路が公開されたことには驚かされた。これはまさにキャッシュレス化の進んだ韓国社会の賜物といえるかもしれない。
しかし、この安全神話も20日大邱地方の大規模集団感染を皮切りに崩れてしまった。しかも、それが、新興宗教である「新天地イエス教会」のたった一人の女性から拡散されたことが公開されると、韓国国民の怒りは今、一気にこの宗教へ向けられている。
韓国メディアの報道によると、61歳の女性が交通事故で病院に搬送された際、新型コロナウイルスと疑わしい症状が出ているため入院していたが、自ら病院を抜け出して宗教活動を続けていた。それが感染拡大につながったのだろうと発表されている。これが本当なら、一人の身勝手な行動で大規模感染が起こったことになり、韓国国民の怒りは当然だろう。25日夕方には新天地イエス教会がYouTubeで声明を発表。自分たちはあくまで被害者であり、政府と保健当局に積極的に協力をしており、いわれのない嫌悪と非難を自制するよう呼びかけている。
さて、韓国関連の話題といえば、今月10日(日本時間)に発表された第92回アカデミー賞で「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」をポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が受賞したことが記憶に新しい。その後『パラサイト』は上映中の日本でも客足が急増。10月から上映されていたアメリカでは、すでにノミネート発表時点で1060スクリーンまで上映館数が伸びていたが、受賞決定後さらに配給され2000以上のスクリーンで公開されることとなった。
韓国映画の歴史を大きく塗り替えることとなった『パラサイト』のニュースは、韓国で大いに盛り上がり、連日大きく取り上げられていた。このまま韓国エンターテイメント業界は更なる勢いを増すと思われていた矢先、この新型コロナウイルスの大規模感染は映画業界に直撃を食らわせた。