最新記事

インドネシア

バレンタイン反対!? 《異教徒の祭り》にイスラム教主流の国は「祝うな、避妊具売るな」と強要

2020年2月14日(金)17時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

バレンタインデーの反対運動を行うインドネシアの女学生 Antana Photo Agency - REUTERS

<日常生活にイスラム教が深く根付いているインドネシアの人びとにとって、2月14日とは......>

2月14日はバレンタインデーで男女の間、特に若い世代では花やチョコレートなどのプレゼントを渡したり、食事や映画鑑賞などで特別な時間を過ごしたりするのはもはや世界共通の「年中行事」となっている。それは世界最大のイスラム教徒人口を擁する東南アジアの大国インドネシアでも同じだ。

ただ、バレンタインデーがそもそもキリスト教の聖バレンタインという殉教者にちなむ行事が一般化して男女の愛の誓いの日とされているものだけにイスラム教徒側から「異教徒のお祭り」であるバレンタインデーへの反論、反発が今年もインドネシアで話題となっている。

首都ジャカルタ西方のバンテン州の南タンゲランではイスラム教団体の意向を受けて地元自治体宗教局が「バレンタインデーを祝う必要はない」との見解を示していることが2月13日に地元紙「テンポ」などで報じられた。

同局の担当者アブドゥール・ロジャック氏は地元マスコミに「現在のバレンタインデーは本来の意味を失い別の目的で祝われている。誤った目的の祝いは中止すべきである。愛の誓いというが何もバレンタインデーに限らず人生の中でそういう誓いはいつでもできるだろう」と述べた。

そのうえで「自治体にはバレンタインデーを禁止する権限はないので禁止はしないが、よく考えてほしい」として、特にミレニアム世代が「バレンタインデーと称してパーティーを開いて麻薬やアルコール、そして未成年や婚前の性交渉をするものだと勘違いしている。これは大変憂慮すべきことだ」と警鐘を鳴らしている。

避妊具店頭から撤去、未成年への販売禁止

さらにスラウェシ島南スラウェシ州の州都マカッサル市の公共風紀特別局は2月11日に市内のスーパーマーケット、薬局、コンビニエンスストアなどに対して「バレンタインデーが近いので避妊具、特にコンドームを店頭から撤去するように」との指示を文書で通達した。英字紙「ジャカルタ・ポスト」などが報じたもので、マカッサル市では同様の措置が2015年から講じられているという。

その文書では各店に対し店頭の目立つ場所から目立たない場所に避妊具を移動するか、レジの中の見えない場所に移動するよう勧告している。

さらに販売に際しては未成年への販売を禁じるよう求めている。購入が必要な客はレジで年齢がわかる身分証明書を提示すれば購入可能という。

同市公共風紀特別局のイマン・フッド局長は「コンドームなど避妊具は既婚者が必要なものであるが、これがチョコレートなど子供が買いたいお菓子などの横に置かれて販売されていることがよくある」として店頭の目立つ場所からの移動を指示したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中