最新記事

インドネシア

バレンタイン反対!? 《異教徒の祭り》にイスラム教主流の国は「祝うな、避妊具売るな」と強要

2020年2月14日(金)17時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアの倫理観や道徳心、文化を踏み外す

こうした動きにはマカッサル市のイクバル・シュハブ市長も同意しており、市長は「バレンタインデーには自制心をなくす人がいる。そしてインドネシアの倫理観や道徳心、文化を踏み外して麻薬やセックスに走ることもある。こうしたことは行政としても未然に防ぐ必要がある」として今回の措置が正当な理由に基づくものであることを強調している。

イクバル市長はさらに市内の学校などの教育機関に対しても「学校で授業の妨げとなるようなバレンタインデーに関する行事をしないように」との通達を出したことも明らかにした。そして「全ての教員は国としての価値観や倫理、文化に反しない限り子供たちの行動を許容するが、授業の妨げになることは考えてほしい。繰り返すがこれはバレンタインデーの全面的禁止ではない」とキリスト教徒などへの配慮もみせながらもバレンタインデーへの行政としての立場を示した。

行政が強調するインドネシアの国としての倫理、道徳、価値観、文化というものは国是でもある「多様性の中の統一」や「寛容性」を差すことがよくあるが、実質的には圧倒的多数を占めるイスラム教徒の持つ倫理観、宗教観、道徳、文化が暗黙裡に優先されるという実態がある。

大都市では西欧型のバレンタインセールも

こうしたバレンタインデーへの数々の「受難」の一方で、首都ジャカルタなど大都市圏ではバレンタインデーにちなんだバーゲンセールや飲食店での割引、パーティー開催なども盛大に行われている。

主要なショッピングモールでは「バレンタイン・セール」が行われ、ファストフードのマクドナルドやA&Wなどではセットメニューを2つ以上頼むとデザートやドリンクの無料サービスや格安サービスという特典を設けている。

特に今年は14日が金曜日で土日の週末と合わせて3日間をバレンタイン商戦と位置づけてどの商店もあれこれと知恵を絞っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中

ビジネス

アングル:米株式取引24時間化、ウォール街では期待

ビジネス

英CPI、11月+3.2%に鈍化 市場は18日の利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中