新型肺炎で死者が出たフィリピンでドゥテルテと中国への反感が噴出
Anti-Chinese and anti-American conspiracy theories have followed the first death.
ドゥテルテは、中国からの旅行者に対する入国禁止は、自分が中国政府指導層と「築いた友好関係を脅かす」ことに気づいていると、クラフトは言う。中国とアメリカに対するドゥテルテの態度を比べてみると大きく違うことがわかる。中国に対しては旅行者の入国禁止措置をためらったドゥテルテだが、アメリカに対しては強気で、フィリピンに派遣される米軍の法的な地位に関する協定を破棄した。きっかけは、麻薬密売の摘発に活躍した元国家警察長官のロナルド・デラ・ローザ上院議員のビザの発給をアメリカが拒否したことだった。
新型コロナウイルスの感染拡大に対するインターネット上の反応は、ドゥテルテを巻き込んだだけでなく、民族としての中国人を標的としたニセ情報を発生させている。それはインドネシアなど大きな中国人コミュニティが存在する国を含めて、世界中でみられる傾向だ。
一部のフィリピンの政治家にとって、本当の敵はウイルスではない。2月4日の上院における公聴会ではコロナウイルスに対する政府の対応が審議の対象となったが、一般国民はすでに政府のやり方は手際が悪く、動きが遅いとみなしている。クリストファー・「ボン」・ゴー議員は、偽のニュースをばらまくインターネットユーザーを厳しく批判し、彼らは「隔離」されるべきだと述べた。公聴会で、元上院議長のビセンテ・ソット3世は、コロナウイルスは西側が中国を攻撃するために開発した生物兵器だと主張する動画を議場で上映し、この陰謀説を「非常に興味深い」と表現した。
加速する国民の不信感
テオドロ・ロクシン・ジュニア外務大臣は動画を批判し、同時に中国政府のコロナウイルスへの対応を褒めちぎり、この病気は「中国の回復力と強さを証明している」と述べた。しかし、彼の讃辞は、ドゥテルテと中国の接近ぶりに不信感を抱くフィリピン国民にとって、同調できるものではなかった。
ウイルスへの対応も、国民の不信感を加速させている。1月26日にフィリピン赤十字のCEOであるリチャード・ゴードン上院議員は、コロナウイルスの感染拡大と闘うために、フィリピン製のマスク140万ドル分が中国に送られたことを明かした。フィリピン国民は、1月に発生したタール火山噴火の被害を受けた人々に、政府はマスクを提供しなかったことにすぐに気付いた。サルバドール・パネロ大統領報道官によると、無料のマスクを一般に配布する計画はない。
ドゥテルテの故郷であるダバオ市では、薬局ではマスクが品切れになっており、行商人がマスクを高値で売り歩いている。1月29日になっても中国福建省チンチヤン発の航空機がダバオにやってきたため、住民は激怒した。2月1日、フィリピンの英字紙は、中国からの旅行者が義務づけられた14日間の隔離措置を経ずにミンダナオの観光地に入ったと報告した。
サンスター・ダバオのコラムニストである中国系フィリピン人のタイロン・ベレズは、以前ダバオ市長を務めたドゥテルテが大統領になって以来、ダバオ市は地元の中国系フィリピン企業よりも中国本土のビジネスを優先し始めたと言う。反ドゥテルテ感情は、コロナウイルスの発生以降、ますます強くなっている、と彼は言う。