麻薬シンジケートに魅力の土地──パラグアイ「流血の街」
大物は今も逃走中
再逮捕されたダ・クルス受刑者のこれまでの犯罪歴を振り返ると、パラグアイの抱える問題がよく分かる。
警察への供述によると、ブラジルで最も貧しいマラニャン州の北東部の寒村で生まれた彼は、10歳のときに西部のマットグロッソ州に移った。
2012年に麻薬の密売で収監、2015年に仮釈放制度で出獄すると、ペドロ・ファン・カバリェロへと国境を越えた。2016年に麻薬密輸容疑で逮捕され、市の刑務所へ送られた。収監後にPCCへに入り、雑務をこなすようになったという。
匿名を条件に取材に応じたブラジルの警官によれば、刑務所内でダ・クルス受刑者の立場は低かったという。
しかし収監中、彼はPCCの大物と知り合う。フレイタス刑事局長によると、この地域で暗殺任務を担当していたPCCの主力級10数人が、ダ・クルス受刑者に近い監房に入っていたという。
こうした大物も今回の脱獄に加わっており、なお逃走中だという。
ペドロ・ファン・カバリェロで脱獄が計画されている最初に情報が寄せられたのは12月中旬だった。
ホアキン・ゴンザレス・バルサ国家刑務局長は12月16日、組織犯罪を担当する捜査官らに文書を送付。その中で、刑務所の「犯罪グループから収監者を救出する」計画に関する密談を、刑務局が傍受したと注意を促した。ロイターは書簡のコピーにより、これを確認した。脱獄事件の発生後、ゴンザレス・バルサ局長は更迭された。
刑務所長からも類似の情報が寄せられており、ペレス法相は信頼性が高いと信じるに至ったという。同法相によると、12月中に刑務所の警備員と警察当局が施設内を一斉調査、しかしトンネルを掘っている形跡は見られなかったという。
ペレス法相はロイターの取材に対し、「再逮捕された受刑者の1人は、この捜索の後でトンネルを掘ったと供述している」と語った。「監視カメラをモニターをする業者からは何の警告もなかった。何も見ていないと彼らは言っている」
アスンシオンに本社を置く警備会社、SITのグスタボ・サンチェス代表はロイターに対し、脱獄が実行された夜に関する情報を法務省に提供したと話しているが、詳細については触れなかった。
ペレス法相によると、パラグアイは犯罪組織を取り締まるため、ブラジル右派政権との協力を強化するという。ブラジル政府は組織の資金を断ち切り、警備がより厳格な連邦刑務所に幹部らを送ることにより、活動を抑えようと試みている。
パラグアイのフレイタス刑事局長は効果に懐疑的だ。
「誰であれ、立ち向かう方法はない」とフレイタス局長は言う。犯罪組織は「(邪魔する者たちの)家族を特定し、親戚や裁判官、検察官、警察官に圧力をかける」
(翻訳:エァクレーレン)
[ペドロ・ファン・カバリェロ(パラグアイ)ロイター]
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