韓国・文在寅も心動かした「仁川のジャン・バルジャン」 その正体は?
空腹に耐えきれずスーパーで万引きをしたという「仁川のジャン・バルジャン」だったが JTBC News / YouTube
<日本に先駆けIRが導入された韓国・仁川市で話題になった出来事は、将来日本でも起きることかもしれない>
昨年末、韓国の仁川で起きたある小さな事件。心温まる出来事が多くの人びとの涙を誘い、日本でもTwitterなどを中心に拡散されて、知っている方もいるかもしれない。
昨年12月10日、国際空港のある都市として有名な仁川のとあるスーパーマーケットで、父子(父親34歳、息子12歳)が万引きをして捕まった。盗みの様子を見ていた店員は、すぐに二人を捕まえ警察に通報し、ほどなくして警官2人が到着した。
警官が父親に事情を聴くと、お金が無かったが、どうしてもお腹が減ってしまい、しかたなく牛乳やリンゴなど約1万ウォン(1000円相当)分の食料を盗んでしまったのだという。
体を震わせながら謝罪を続ける父親に警官が詳しい話を聞くと、糖尿病と甲状腺の持病があり、生活保護を受けているが、家族4人を食べさせるのには足りないという。病気のため、6カ月前には務めていたタクシー運転手の仕事を辞めざるをえず、奥さんとはすでに離婚。息子2人と母親を養っていかなくてはならない立場だった。
この父親の事情を聞いたスーパーマーケットの主人は「自分にも子供がいるので気持ちがわかる」と語り、万引きの罪を許すよう警官に伝えた。警官二人はそんな父親の話を涙ながらに聞き、父子を食堂に連れて行ってクッパをごちそうした。
美談はこれだけではなかった。たまたまスーパーマーケットで父親の話を聞いていた一般市民が食堂にやってきて、父親に現金20万ウォン(約2万円)の入った封筒を手渡して去っていった。警官はその後、行政福祉センターを通じて父親に職業あっせんと、息子たちには給食無料カードを手配してやったという。さらにスーパーマーケットからは、この家族に生活用品の寄付をするという申し出もあった。
仁川のジャン・バルジャンに支援の輪
この話題がニュースで伝えられると、父親は小説『レ・ミゼラブル』で、お腹を空かせパンを盗んで投獄されてしまう主人公になぞらえて「仁川のジャン・バルジャン」と呼ばれるようになった。
貧困に苦しむ人を助けたいと、仁川の福祉センターにはボランティア志願者が増え、ジャン・バルジャン家族を支援したいという申し出もあったという。万引きのあったスーパーマーケットには、全国から一家に渡してほしいと衣料やお米などの食料品が続々と届けられるようになった。