最新記事

日本社会

日本の少子化の根本要因は「少母化」──既婚女性の子どもの数は実は減っていない

2020年1月15日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

上記の分布から既婚女性の子ども数の中央値(median)を出すと、1985年が2.08人、2015年が2.03人でほとんど変わっていない。都道府県別に見ると<表2>、増えている県すらある。以下の19県だ。

data200115-chart02.jpg

既婚女性の出産数は減っていない。少子化の真の要因は、人口減少・未婚化による「少母化」ということになるが、これはいかんともし難い事態だ。人数が多い団塊ジュニアの女性ももうすぐ50代になり出産年齢を外れる。若い女性の絶対数もどんどん減るので、どうやっても日本の出生数を増やすのは不可能だ。

少子化の進行を少しでも食い止める方法は、「少母化」のもう一つの要因である未婚化を抑えること。これは広く認識されており、各地で婚活支援の取り組みが盛んに実施されているが、なかなか効果を上げられないでいる。

実のところ、若者の間では結婚は「オワコン」という見方も広まっている。出産願望は強く、20代女性の3割が「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」と考えている(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2018年)。

こうした考えを持つ女性が出産に踏み切れたら、状況はだいぶ改善されるだろう。未婚、事実婚、同性婚......どういうライフスタイルを選んでも、子どもを産み育てられる社会の実現が望まれる。しかし現実の日本はその実現度合いが低く、2016年の婚外子比率は2.3%しかない(フランスは59.7%、スウェーデンは54.9%)。各国の婚外子比率は、合計特殊出生率とプラスの相関関係にある(拙稿「婚外子が増えれば日本の少子化問題は解決する?」本サイト、2017年7月13日)。

今回のデータから、結婚をしている夫婦に限ると出産数は減っていないことがうかがわれる。法律婚をしているのは25~44歳女性の6割だが、残りの4割の人たちも出産・子育てを考えられる社会にすることが問題解決のカギになるだろう。寡婦控除のみなし適用等、未婚の母への支援が以前より進んでいるのは、それに向けた取り組みとして評価できる。

<資料:総務省『国勢調査』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続伸、トランプ関税への不安後退 中

ワールド

ロシア・ウクライナ、黒海・エネ停戦で合意 ロ「制裁

ワールド

インド政府、サムスンに関税と罰金で6億ドル強の支払

ワールド

米大統領と裁判所の対立、世論調査で大多数が司法判断
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 10
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中