新型肺炎パンデミックの脅威、真の懸念は中国の秘密主義
Another Epidemic Brewing in China
香港特別行政区政府は検疫法を発動させて、全ての病院や保健施設で厳戒態勢を敷いた。ただ、昨年から続く民主化デモで、住民の間で政府当局に対する不信感が募っている。そんななかでの検疫と感染対策(つまり当局による監視強化)に、政府の「本当の狙い」をめぐる噂が飛び交っているのも事実だ。
一方、シンガポールでは、年末年始に家族で武漢を訪れた3歳の女児が、帰国後に重い肺炎にかかったことが判明。症状自体は幼児に多く見られる肺炎だが、既知のウイルスや細菌が原因ではないことが確認され、女児を隔離したことが発表された。
だが、これらの感染者と、武漢の海鮮市場とのつながりが確認され、ここから病原体が広がったことが判明したとしても、謎は深まる一方だ。そもそも現時点では、人間に肺炎を引き起こす魚のウイルスは知られていない(細菌や寄生虫では存在する)。
ただ、この海鮮市場は巨大で、生きたヘビやウサギ、鳥などの野生動物も売られているらしい。2003年のSARS流行は、ウイルスに感染したジャコウネコが屠殺された広州の市場から広がった。
中国当局とWHO(世界保健機関)は「人から人への感染は確認されていない」と言うが、もし武漢肺炎の病原体がコロナウイルスの一種だとすれば、SARSやMERS(中東呼吸器症候群)のように、唾液や鼻水を介して人から人に感染するのはほぼ確実だ。実際、武漢市は1月1日に海鮮市場を予防的に閉鎖したにもかかわらず、翌週には新たな感染例が見つかった。
しかしこの騒動で真に懸念されるのは、中国の秘密主義的な態度だ。昨秋、北京で肺ペスト感染者4人が入院したときも、中国がWHOに報告したのは2週間以上も後だった。現地のメディアで一とおり報じられた後は、ニュースもぱったり途絶えている。
このため近隣地区でネズミが蔓延している事実とのつながりや、内モンゴルで確認されたペスト感染者との関係、そして感染がどのくらい広がり、どのように終息したかといった重要情報は、いまだ明らかにされていない。
武漢肺炎もいつの間にか終息すればいいのだが、現時点では最悪のシナリオをたどる恐れがある。SARSのときのような世界的感染拡大だ。
SARSが大流行したのは2003年だが、中国政府は2002年12月の時点で、見たことのない呼吸器疾患が広州で相次いでいることを把握していた。だが、WHOにも近隣諸国にもその情報を伝えなかった。
だから2003年2月に、SARSに罹患した男性が香港を訪れたとき、香港の保健当局はこのウイルスについて何も知らなかった。
男性は九龍にあるメトロポール・ホテル(現メトロパーク・ホテル)の9階に滞在し、同階の宿泊客に感染が拡大。彼らが北京、ベトナム、シンガポール、カナダにウイルスを持ち帰り世界的な感染拡大につながった。