新型肺炎パンデミックの脅威、真の懸念は中国の秘密主義
Another Epidemic Brewing in China
中国政府はこの悲劇を回避できたはずだが、秘密主義を維持し、事実を否定することを選んだ。彼らが中国国内のSARS流行を認めたのは、2003年4月のこと。パニックに陥った出稼ぎ労働者や学生が故郷に逃げ帰ったため、かえって中国全土に感染を広げてしまった。
ようやく感染拡大に歯止めがかかったのは、全人口がSARSに感染している恐れがあると見なして、無数の検温所を設置し、あらゆる人の体温を一日に何度も調べ、高熱の症状が見られる人を例外なく隔離してからだった。WHOは2003年7月5日に中国のSARSの終息宣言を出した。
その教訓は明白。すなわち「感染を隠すな」だ。
中国政府は情報公開を
WHO総会が2005年に採択した「国際保健規則」は、加盟国が国際的な緊急事態を引き起こす恐れのある感染例を把握した場合は、速やかにWHOに通知すること、さらにその科学的検証のために協力することを義務付けている。
中国はこの規則に同意しただけでなく、SARS流行時に香港で対策の陣頭指揮に当たった陳馮富珍(マーガレット・チャン)のWHO事務局長就任を支持した。
だが、今回の新型肺炎に関して、武漢市と中国政府がWHOに提供している情報はごくわずかだ。中国政府は国際保健規則を遵守するどころか、事実を公表した人物を逮捕して、情報を厳しく管理したがっているように見える。その戦略は、地元住民と中国当局の関係が極めて悪化している香港では、とりわけ危険な結果をもたらしかねない。
武漢を中心に広がる謎の病気は、ひょっとすると比較的良性で、感染者は全員無事に回復して、日常生活に戻れるかもしれない。ただ、現時点ではその可能性は低そうだ。
感染者の発見される地域が広がり、潜在的な病原体ウイルスに関する情報が増えるに従い、「武漢の海鮮市場で魚か野生動物に接触した人しか感染しない」という当局の説明は、ますます受け入れ難くなっている。そして感染拡大の懸念は高まっている。
莫大な数の人が中国内外を移動する春節を前に、その懸念は一段と現実味を増している。SARSも2003年のメイデーのときに大きく広がった。
感染症の流行を抑えるためには、専門家と市民両方の信頼が必要だ。そして信頼を得るためには、オープンな姿勢が必要だ。中国政府が肺炎の流行について信頼できる情報を提供して、世界の公衆衛生のために積極的な役割を果たす意思があることを示し、大衆の信頼を取り戻すことは、中国政府自身の利益になる。
「まだ何の病気なのかは分からない。現在調査中だから、待ってくれ」と言ってもいい。あるいは、「このウイルスがどのように広がったのかは、現在専門家のチームに調べさせている」と言ってもいい。
重要なのは、正直な情報交換を定期的に実践すること。そしてそれを春節が来る前に始めることだ。
<本誌2020年1月21日号掲載>
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