スコットランド独立を占うカタルーニャの教訓
How to Succeed at Seceding
共に独立を求めるカタルーニャの旗を掲げて連帯を示すスコットランドの人たち Russell Cheyne-REUTERS
<ジョンソンが進めるEU離脱を前に、イギリスからの独立を目指すスコットランドがスペイン・カタルーニャの先例から学べること>
2019年12月12日の英総選挙でEU離脱を推し進める与党・保守党のボリス・ジョンソン首相が地滑り的勝利を収め、今度は「イギリスからの離脱」を求める声が勢いを増している。イギリスからの独立をめぐり、過去には住民投票を実施したこともあるスコットランドで、だ。
2014年9月、スコットランドはイギリスからの独立の是非を問う住民投票を行った。当時はイギリス残留支持が55%と、独立派の45%を上回ったが、EU離脱を前にこの状況に変化が見え始めている。
イギリスが2016年にEU離脱を問う国民投票を実施した当時から、スコットランド人の多数派はEU離脱に反対だ。2016年の投票では、イギリス国民全体の52%が離脱支持に回るなか、スコットランド人の62%がEU残留を選択。そして昨年12月の英総選挙では、EU離脱反対を掲げるスコットランド民族党(SNP)が前回より13議席増の48議席を得て、英議会の第3党に躍り出た。
SNPのニコラ・スタージョン党首はスコットランド独立の是非を問う2回目の住民投票実施を総選挙の公約に掲げており、実施に反対するジョンソンに異議を唱えている。
ジョンソンの現在の立場は、スペインのペドロ・サンチェス首相のそれに近い。スペイン北東部のカタルーニャ自治州ではスペインからの分離独立を求める声が高まっており、独立の是非を問う住民投票を認めないスペイン政府との間で分断が進んでいる。
実際のところ、カタルーニャでは過去に2回の投票が行われてきたが、両方ともスペイン司法当局から無効とされた。1度目は2014年11月にカタルーニャ自治州のアルトゥール・マス首相(当時)が実施し、独立賛成派が圧勝したものの、マスは2年の公務禁止と3万6500ユーロの罰金刑を科せられた。後継のカルラス・プッチダモン自治州首相も2017年10月に住民投票を実施。投票率43%の中、92%が離脱支持に投じた。
だが、スペイン中央政府で保守派の与党・国民党を率いるマリアノ・ラホイ首相(当時)は迅速かつ手荒な「報復」に出た。ラホイは、自治州が「スペインの公益を著しく損なうような行動を取る」場合、中央政府が自治権を停止できると定めた憲法155条を発動し、ブッチダモンは逮捕を恐れてベルギーに逃亡。2019年10月には、2017年の住民投票の実施に関与したなどの罪で最高裁判所がカタルーニャ自治州幹部ら9人に対し、禁錮9~13年を言い渡した。
EU離脱の経済的損失
一方、イギリスで同様の事態が起きることは想像しにくい。1978年制定の憲法でスペイン国民の「永続的な統一性」が高らかにうたわれているスペインと違い、イギリスでは1998年制定のスコットランド法に基づき、英議会が認可すれば、独立についての住民投票が合法的に認められている。
だとすればなおさら、スコットランドは再び住民投票を行うのだろうか? ジョンソンは、2014年にイギリス残留を選んだスコットランドの住民投票の結果は「尊重されるべき」と発言しているが、イギリスのEU離脱を問う国民投票でスコットランド人が離脱にノーを突き付けたのはその後の2016年だ。そして昨年12月の総選挙では、与党・保守党はスコットランドでの13議席のうち7議席も失った。