スコットランド独立を占うカタルーニャの教訓
How to Succeed at Seceding
スコットランドでは2014年の住民投票以降ずっと、独立賛成派は45%前後で推移してきた。だがイギリスのEU離脱が決まった以上、もう一度住民投票が行われれば独立派が過半数を取る可能性は十分にある。ブレグジットをめぐる騒動でスコットランド経済が被った損失は既に30億ポンドに達するとの試算もある。
12月の総選挙でのSNPの大躍進後、スタージョンはこう述べた。「ボリス・ジョンソンにはイギリスをEUから離脱させる権限はあるが、スコットランドをEUから離脱させる権限は断じてない」
スタージョンの主張は、カタルーニャの分離独立を目指すキム・トラ州首相を彷彿とさせる(両者は2018年7月にエディンバラで会談した)。「これはジョンソンや英政府の政治家に許可を求める話ではない。スコットランドの人民が自らの未来を自ら決める民主的権利の主張だ」と、スタージョンは勝利宣言で語った。
住民投票を認めるのも手
カタルーニャの分離独立派が近年強く求めているのも、自治を行使する権利だ。2019年10月の最高裁判決を受け、トラは「カタルーニャの自己決定の権利を守るために戦い続ける」と語り、目下の憲法危機を脱するには合法的な住民投票が最善の策だと主張した。ただし、カタルーニャ住民を対象とした最近の世論調査では、分離独立派が41.9%にとどまり、残留派が48.8%と支持を伸ばしている。
スコットランドにもカタルーニャにも一定の自治は認められているが、強硬な分離独立派が望む水準には程遠い。SNPへの対応に苦慮する英政府にスペイン政府が伝授できる教訓があるならば、相手の要求を無視し強引な手法で独立を阻止しようとしてもうまくいかない、ということだ。
中央政府にカタルーニャの独立を容認する政権が誕生する可能性はまずない。となると独立派が望むのは、柔軟な憲法解釈によって合法的な住民投票を認めてくれる中央政府の誕生という、同じく実現可能性の極めて低いシナリオだ。ただし中央政府にとっては大きな賭けとはいえ、残留派が勝ってこの論争にひとまず終止符が打たれるなら、試す価値はあるかもしれない。
残留派がスペイン国民の「永続的な統一性」を掲げる一方、分離独立派は自治の権利と「政治的共存」を主張する。憲法が保障する2つの矛盾した主張のバランスをどう取るべきか、スペインの憲法危機に出口は見えない。
自らの未来を自ら決めるスコットランドの権利をジョンソンが認めなければ、イギリスにもスペインと同じ混乱が訪れるかもしれない。
<本誌2020年1月14日号掲載>
【参考記事】「スコットランド独立」は得策か
【参考記事】二つのナショナリズムがぶつかるスコットランド──分離独立問題の再燃
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