インドネシアで新種の鳥、1度に10種も発見 19世紀の探検家がやり残した地域調査で成果
求められる政府の環境保護政策
インドネシアの多数を占めるジャワ人は、鳥を飼って鳴き声を鑑賞する趣味があるほどの鳥好きな民族だが、それも今回新種が発見されたように、数多くの野鳥がいる豊かな生態系があるからだろう。
ところが、歴代のインドネシア政府は「豊富な動植物、熱帯雨林といった自然環境の保護に力をいれる」と口では唱えていながらも、その一方で貴重で多様な生物や植物を育んでいる熱帯雨林に関しては開発優先で伐採や焼き畑農業を容認あるいは黙認してきたのが残念ながら実状だ。
インドネシアを代表する環境保護団体「環境フォーラム(WALHI)」の最新の報告によると、スマトラ島最北部アチェ州では過去3年間に3万5000ヘクタールの森林が破壊されたという。
鉱山開発、水力発電所建設、道路などのインフラ整備、そしてパームヤシ農園の造成などがその主な原因で、すべて人為的な理由であるとしている。
そしてこの熱帯雨林破壊によってスマトラトラ、スマトラサイ、オランウータンなどの生息環境が失われていると指摘している。そうした現状を踏まえた上で「州政府や中央政府はこのような熱帯雨林開発になんらかの制限を加えないと、今後2年でさらに減少に拍車がかかる」と警告している。
いつの時代もそしてどこの政府も「開発と自然保護」という難題に直面するのは常であるとはいえ、新種の動植物の発見が相次ぎまだまだ未知の発見の可能性が極めて高いインドネシアだけに、官民挙げての根本的な自然保護対策が急務となっている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。