インドネシアで新種の鳥、1度に10種も発見 19世紀の探検家がやり残した地域調査で成果
今回発見された新しい亜種の鳥のひとつ、トギアンヒメアオヒタキ CNA / YouTube
<瑠璃色の羽や、美しいさえずりの野鳥たち。熱帯のジャングルには人間がまだ知らない生命にあふれている──>
インドネシアの離島で鳥類の新種と亜種の合計10種が発見されたことが1月10日付けの国際的な学術誌「サイエンス」で報告された。ナショナル・ジオグラフィックが伝えたところによるとシンガポール国立大学(NUS)の鳥類専門の研究者フランク・ライント教授らが、スラウェシ島の東にあるマルク海にあるタリアブ島、トロ湾外縁のペレン島、北部トミニ湾に浮かぶバドゥダガ島の3島を対象として調査した結果、昆虫を食べる小さな鳴き鳥の「ペレンメボソムシクイ」「タリアブメボソムシクイ」、驚くと尾羽を扇形に広げるオウギビタキ属の「ペレンオウギビタギ」、花の蜜や果実を食べるミツスイ属の「タリアブミツスイ」、さらに「タリアブセンニュウ」「ドギアンヒメアオヒタキ」」などの新たな鳥類を発見、確認したという。
NUSの専門家によると、今回新種の鳥類が見つかった島はいずれも英国の探検家アルフレッド・ウォレスが1854~62年にかけて東南アジア一帯を調査研究のために踏破した際、あまり調査に時間をかけなかったことや深海に周囲を囲まれており氷河期も他の陸地と繋がっていなかったとみられる自然環境から、固有で未発見の鳥類が存在する可能性が高いと狙いをつけて調査を行い、成果を上げたという。
生物の多様性を示すウォレス線
19世紀にウォレスが行った調査研究では、インドネシアのバリ島=ロンボク島間のロンボク海峡からスラウェシ島=カリマンタン島間のマカッサル海峡を経て南北に延びる海上を境界として東西で生物分布に大きな違いがあることがわかり、これは現在ウォレス線と呼ばれている。
さらにオーストラリアの北側に位置するティモール島の東側からバンダ海のブル島、ハルマヘラ島の西にかけてのバンダ海、モルッカ海を通って太平洋に抜ける海域にかけては主に貝類や哺乳類の分布が東西で異なるウェーバー線というものも存在する。
ウェーバー線は動物学者マックス・ウェーバー氏が1902年に提唱したものでウォレス線と並んで、インドネシア国内に生物分布の「境界」となる線が2種類も存在することになる。
これがインドネシアの生物の多様性を特徴づけるものとなっており、これまで多くの内外の学者、研究者、探検家を魅了し続けてきた。