トイレの前でズボンを脱ぎ、下半身パンツ1枚で待つ。これが刑務所生活の実態だ
もしも矯正施設に長期間入れておいたとしたら、彼らは実社会に出たとき社会になじめず、復帰が難しくなる。だとすれば、入ってもなるべく早く出てもらうか、もしくは最初から入れないほうがいいという考え方なのだ。
特に職を持っている受刑者は、入れないにこしたことはないと考えられるという。なぜなら、自活能力があるからだ。そんなに単純な話なのかと疑いたくもなるが、実際のところ新受刑者の68.4%は無職という統計もあるという。
それに現実問題として、受刑者になるのは本人の資質、あるいは運命めいたものも影響するのだと著者は指摘している。
(前略)というのも、新受刑者の最終学歴の統計を見ると、半数近くが中卒以下となっている。
そのほかの内訳は、高校中退が二割以上で、高校卒業以上の学歴を持つ者は全体の三割程度である。
高校進学率が99%と言われる中で、中卒という道を選ぶのには、財政的な理由や知力的な理由など、人生において何らかのハンディがあると推測される。(17〜18ページより)
日本の人口比で考えてみても、受刑者の数は数千人にひとりというレベルで非常に少ない。学校にひとりはいる札付きのワルであっても、刑務所に入ることは非常に難しいらしい。
定職にも就かず、反省もせず、何度も同じ過ちをして収容される。累犯者の多くはこのような人々であり、一般的市民とは住む世界が違うと言っても過言ではない。(18ページより)
「○○が△△の罪で逮捕された」といったニュースを日常的に見聞きしていると、捕まった人たちはみな刑務所に送られるというイメージを抱きがちだ。しかし、そう単純なものではないのだ。
とはいえ、どこにでもいそうな一般市民が1回の犯罪で刑務所に入る場合も当然ある。これも報道でよく耳にするフレーズではあるが、「つい、カッとなってヤッてしまった――」というような突発的殺人、もしくは傷害致死という罪だ。
人の死が絡んでいる重大事件だけは、服役を免れることができないということ。ただし、そのような凶悪事件で実刑に処されるのは、実際のところ年間200件程度しかないという。
初めて刑務所に入るのは年間あたり1万人程度で、その半分が初犯。つまり母数から考えると、凶悪事件の比率は全体の数%にも満たない特異な例ということになる。
刑務所に入る事例として現実的に考えられるのは、出来心で万引きしたという場合である。
その際、おとなしく捕まらず店員を突き飛ばしてケガをさせた場合は、強盗致傷にあたるので実刑で三年は食らう。おとなしく捕まったら万引きで不起訴処分になり、捕まった時に暴れて店員に少しでもケガをさせたら強盗致傷で一発アウトというのは、逃げさせないという刑事政策的な観点からはともかく、罰が重すぎるのではないかという論争になっている。(19ページより)