トイレの前でズボンを脱ぎ、下半身パンツ1枚で待つ。これが刑務所生活の実態だ
しかも、たとえ重大事犯であったとしても、刑務所に入るためには「刑事手続」というプロセスを踏む必要があり、悪いことをしたから簡単に入れるというものではないのだ。
とはいえ入れられてしまったら、その生活は楽なものではない。第二章「刑務所の暮らしはどんなものか?」を読めば、冒頭でも触れたとおり、そのつらさを想像せざるを得なくなるだろう。
刑務所では分刻みでスケジュールが決まっていて、それはトイレの時間も同様である。
朝食を済ませてから刑務作業に移るまでには30分間ほどの時間があり、この間に受刑者は用を足しておかねばならない。30分といえば余裕があるように思えるが、雑居房で6〜8人の受刑者が共同生活しているため、ひとり当たりのトイレの時間は5分以下となる。
受刑者は手早くトイレを済ませられるように、事前に準備をしておく。
まず、トイレの前でズボンを脱ぎ、下半身パンツ1枚になってチリ紙を片手に持って待つ。そして、前の人が出てきたら素早く「トイレ入ります」と刑務官に声をかけてトイレに駆け込み、すぐに用を足して出てこなければならない。(75〜76ページより)
このような解説を目にすると、できることなら刑務所には入りたくないものだと思わざるを得ないのではないだろうか。
『もしも刑務所に入ったら――「日本一刑務所に入った男」による禁断解説』
河合幹雄 著
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)をはじめ、ベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。
2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。