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北磁極の移動速度が加速している......シベリアに向けて移動し続ける

2019年12月24日(火)18時45分
松岡由希子

地球の北磁極はカナダからシベリアに向けて移動している NOAA NCEI/CIRES

<北磁極の年間移動距離が平均55キロにのぼり、北磁極は現在、カナダ北極圏からロシアのシベリアに向けて北西方向に移動している......>

北磁極とは、北半球の地表面で磁力線の方向が鉛直になる地点である。自転軸の北端にあたる北極点は常に一定である一方、流動する溶鉄のコア(核)によって生成された北磁極は移動し続けている。1990年代以降、その移動速度は加速しており、最新の衛星データでは、北磁極が過去400年間で最速のペースで北極圏を移動していることが示されている。

1990年以降、移動速度が突然速くなった

アメリカ海洋大気庁(NOAA)傘下の国立環境情報センター(NCEI)によると、1831年に正式に発見されて以来、北磁極の総移動距離はおよそ2250キロメートルにおよぶ。

matuoka0212b.jpg北磁極は移動している credit/nature


英国地質調査所(BGS)のキアラン・ベガン博士は、その変遷について「1590年から1990年までは概ね1年間に10キロ未満のペースでカナダ北極圏を蛇行していたが、1990年以降、移動速度が突然速くなった」と解説。

2000年以降、この20年では、北磁極の年間移動距離が平均55キロにのぼり、北磁極は現在、カナダ北極圏からロシアのシベリアに向けて北西方向に移動している。2020年以降もシベリアに向けて移動し続けるとみられるが、年間移動距離は40キロ程度に減速すると予測されている。

新しい「世界磁気モデル」が発表された

北磁極の移動速度が加速するなか、国立環境情報センター(NCEI)と英国地質調査所(BGS)では、地磁気の分布を示す「世界磁気モデル(WMM)」を5年ごとに更新してきた。2019年2月4日には、「WMM2015」をリリースした2015年以降に北磁極が想定以上のペースで移動したことをふまえ、その修正版「WMM2015v2」を公表している。2019年12月10日にリリースされた最新モデル「WMM2020」は2024年12月31日まで5年間、運用される見込みだ。

「世界磁気モデル」は、米国国防省や英国国防省、北大西洋条約機構(NATO)、アメリカ連邦航空局(FAA)などで標準のナビゲーションツールに採用されているほか、スマートフォンやカーナビゲーション、船舶や旅客機のナビゲーションシステムなどもこれに依拠している。

1990年以降に北磁極の移動速度が加速した原因はまだ明らかになっていない。ベガン博士は「地球の外核で不規則な変化があり、カナダの磁場も弱くなっているが、これらの要因によって北磁極の移動速度が加速したとは言い切れない」と述べている。

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