巨大児童ポルノサイト捜査で逮捕者300人超──韓国で拡大するダークウェブ
韓国政府はダークウェブの取り締まりに力を入れ始めたが ILLUSTRATION BY BRO STUDIO-SHUTTERSTOCK
<暗号通貨出現によって国家監視の及ばない決済手段が普及し、犯罪の温床となってきたダークウェブ。韓国男性運営の「ウェルカム・トゥ・ビデオ」からは25万点以上の児童ポルノ映像と100万回超のダウンロード件数が>
米英韓などの警察当局がこの10月、いわゆるダークウェブ(闇ウェブ)の児童ポルノサイトをめぐり、これまでに世界各国で300人以上を逮捕・訴追したと発表した。捜査機関は、支払いに用いられたビットコインの取引を追跡することで関係者の検挙にこぎつけた。
問題のサイト「ウェルカム・トゥ・ビデオ」は、現在までに明るみに出たなかで最大規模の児童ポルノサイトとされている。捜査で見つかった映像は25万点以上。ダウンロード件数は100万回を超すと見られている。
一般のネットユーザーにはアクセスできないダークウェブのアイデアが生まれたのは1990年代後半。当時は、アメリカのスパイが秘密の連絡を取る手段として期待されていた。結局、この構想は実現しなかったが、人権活動家や民主活動家が専制国家の監視を逃れて連絡を取り合うために役立つと考えられた。
しかし、ダークウェブは犯罪の温床にもなった。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の出現により、国家のコントロールが及ばない決済手段が普及し、この傾向に拍車が掛かっている。
ウェルカム・トゥ・ビデオのサイト運営者は、韓国人男性のソン・ジョンウ。容疑者の3分の2は韓国人だ。
6人だけだった捜査班
児童ポルノサイトは一般に、罰則が軽く、監視が手薄な国に拠点を置く傾向がある。その点、韓国では児童ポルノの制作や配布はともかく、所持に対する罰則が国際的に見てかなり軽い。
韓国でソンにくだされた判決は1年半の実刑。有罪になった韓国人ユーザーたちも、数千ドル相当の罰金を科されただけだ。アメリカでは、この事件で既に15年以上の実刑判決がくだった人物もいるという(ソンは今後、アメリカに身柄を送られて裁かれる可能性がある)。
今回の事件を受けて、韓国も児童ポルノ対策に乗り出した。国会には、最高刑の引き上げを目指す法案が提出されている。政府も大法院(最高裁判所)に対して、量刑ガイドラインを作成するよう要請した。韓国の裁判所で軽い刑しか言い渡されないことが多い要因として、量刑ガイドラインが存在しないことが指摘されているためだ。
しかし、ダークウェブ上で横行する犯罪は児童ポルノだけではない。ユーザー全員が犯罪に手を染めているわけではないが、韓国では世界の平均よりも速いペースでダークウェブの利用が拡大している。1日当たりの利用者数は平均で1万5591人。この数字は、2016年の約3倍だ。