最新記事

教育

欧米先進国では富裕層の高校生でもアルバイトに熱心な理由

2019年12月18日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

高校生のアルバイトを欧米諸国では社会経験の一環として捉えている sturti/iStock.

<経済的な事情がなければ、日本では高校生のアルバイトは一般的には推奨されていないが......>

修学旅行の費用が高騰している。2016年の統計によると、高校2年生の保護者が支出した平均額は私立で11万2000円、公立でも8万2000円になる(文科省『子供の学習費調査』)。私立で高いのは想像がつくが、公立でも8万円超えとは驚きだ。行先に海外を選ぶ学校が増えているためだろう。

経済的理由で参加できない生徒もいるのだから、親や教師にすれば実に忍びない。修学旅行は、正規カリキュラムの特別活動に属する授業だ。社会科の授業内容を織りまぜる学校も多い。経済的理由で修学旅行の機会を奪われるのは、教育を受ける権利の侵害とも言える。

しかし高校生ともなれば、10万円弱の費用くらいアルバイトをして自分で稼いだらどうか、という意見もある。社会勉強も兼ねて、という意味だ。生徒や保護者に対し、堂々とそれを言う高校もあるようだ(『AERA』2019年12月2日号)。

突飛な提案にも聞こえるが、諸外国ではよく聞く話だ。アメリカでは、家が裕福であってもアルバイトをして、遊興費や大学進学の費用を自分で稼いでいる生徒が少なくない。親にすれば、わが子に社会経験を積ませる目論見がある。

経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA 2015」によると、アメリカの15歳生徒のアルバイト実施率は30.4%で、日本の8.1%よりもずっと高い。調査対象の57カ国・地域を高い順に並べると、<表1>のようになる。

data191218-chart01.jpg

首位は北アフリカのチュニジアで、15歳生徒の半分近くがバイトをしている。上位には発展途上国が多いが、先進国でも実施率が高い国がある。ニュージーランドは36%、デンマークは33%、アメリカは30%で、英仏独も日本よりだいぶ高い。

日本の8.1%は下から2番目で、最下位は韓国の5.9%だ。受験競争が激しい国で、経済的に逼迫でもしていない限り、バイトをする生徒は少ないのだろう。それを禁止している学校も多い。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中