欧米先進国では富裕層の高校生でもアルバイトに熱心な理由
高校生のアルバイトを欧米諸国では社会経験の一環として捉えている sturti/iStock.
<経済的な事情がなければ、日本では高校生のアルバイトは一般的には推奨されていないが......>
修学旅行の費用が高騰している。2016年の統計によると、高校2年生の保護者が支出した平均額は私立で11万2000円、公立でも8万2000円になる(文科省『子供の学習費調査』)。私立で高いのは想像がつくが、公立でも8万円超えとは驚きだ。行先に海外を選ぶ学校が増えているためだろう。
経済的理由で参加できない生徒もいるのだから、親や教師にすれば実に忍びない。修学旅行は、正規カリキュラムの特別活動に属する授業だ。社会科の授業内容を織りまぜる学校も多い。経済的理由で修学旅行の機会を奪われるのは、教育を受ける権利の侵害とも言える。
しかし高校生ともなれば、10万円弱の費用くらいアルバイトをして自分で稼いだらどうか、という意見もある。社会勉強も兼ねて、という意味だ。生徒や保護者に対し、堂々とそれを言う高校もあるようだ(『AERA』2019年12月2日号)。
突飛な提案にも聞こえるが、諸外国ではよく聞く話だ。アメリカでは、家が裕福であってもアルバイトをして、遊興費や大学進学の費用を自分で稼いでいる生徒が少なくない。親にすれば、わが子に社会経験を積ませる目論見がある。
経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA 2015」によると、アメリカの15歳生徒のアルバイト実施率は30.4%で、日本の8.1%よりもずっと高い。調査対象の57カ国・地域を高い順に並べると、<表1>のようになる。
首位は北アフリカのチュニジアで、15歳生徒の半分近くがバイトをしている。上位には発展途上国が多いが、先進国でも実施率が高い国がある。ニュージーランドは36%、デンマークは33%、アメリカは30%で、英仏独も日本よりだいぶ高い。
日本の8.1%は下から2番目で、最下位は韓国の5.9%だ。受験競争が激しい国で、経済的に逼迫でもしていない限り、バイトをする生徒は少ないのだろう。それを禁止している学校も多い。