ハイチの治安は最悪レベルの無法状態、ギャングと当局の癒着疑惑も
当局の黙認が助長する犯罪
モイーズ大統領は11月、ロイターとのインタビューで、ハイチ警察の強化に取り組んでおり、ギャング構成員の武装解除に向けた委員会を復活させたと述べている。
大統領府は10日、治安対策について問い合わせたロイターに対し、「違法な暴力に関する告発は、優先的に我が国の司法制度による捜査・対応の対象となる」と文書で回答した。
だが、政権に批判的な人たちによれば、モイーズ大統領の指揮下にある司法当局は犯罪組織のリーダーを訴追していない。実質的に、犯罪組織のなすがままに任せ、警察の権威を弱めてしまっている。
「警察が犯罪組織の一員を拘束すると、必ず当局からの介入があり、釈放することになる」と語るのは、ハイチ国民人権擁護ネットワーク(RNDDH)のピエール・エスペランス氏。
10日の米下院における公聴会で証言したエスペランス氏は、今年に入って殺害された警察官の数は、昨年が17人、今年は40人以上に上るという。
人権活動家が挙げる当局による犯罪黙認の顕著な例は、モイーズ政権に反対する抗議行動の拠点となっているラ・サリーヌ地区で1年前に起きた虐殺事件だ。
国連の報告書によると、ギャングは2日間にわたり26人を殺害したが、警察は介入しなかった。報告書の中にある目撃証言は、ギャング構成員とともに政府高官の姿があったとしている。
「こうした告発により、ギャングと当局の間に共謀関係が存在する可能性が浮上している」と、報告者は指摘している。
この政府高官は一切の関与を否定していたが、最終的には解任された。だが、この高官以外に逮捕・訴追された者は1人もいない。
ラ・サリーヌ地区の住民は、見殺しにされているようだと話す。
「あのような事件が起きても、当局者からの訪問は一切ない」と語るのは、55歳のマリールード・コレスタンさん。彼女は、ばらばらになった遺体の山のなかに24歳の息子の亡骸を見つけ、自宅は焼かれてしまったという。「ギャングたちはまた戻ってくる。女も男も子どもも区別しないと言っていた」
RNDDHによると、こうした虐殺事件はモイーズ大統領の就任以来6回発生している。11月にも起きたばかりだという。
息子2人が見つからないバーナードさんを含め、多くの人は怖くてまだ帰宅できないと話す。
「息子たちが死んでいないことを願っている」とバーナードさん。「こんな暴力状態が終わりを告げ、生きていける場所を見つけたい」
Andre Paultre Sarah Marsh
(翻訳:エァクレーレン)
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