金融情報大手リフィニティブがロイターの香港デモ報道を阻止、8月から200本以上
フィルタリングシステムは中国本土の読者へのニュース提供を遮断するように設計されているが、他の市場ではこれらのニュースにアクセスできる。事情に詳しい関係者によると、見出しに含まれる「香港」や「抗議」などのキーワードを見つけ出す仕組みだという。
リフィニティブの従業員も電子メールで「制限付きニュース」コードについて、中国だけに適用するか、それとも汎用性を持たせて、将来他の国でもニュースを遮断するのに使えるようにするかを協議した。電子メールのやり取りからは、従業員がこのコードに汎用性を持たせる案を支持したことが読み取れる。同社が中国以外の国でフィルタリングシステムを導入したかどうか、ロイターは証拠を得ていない。リフィニティブは制限コードの中国以外での利用を計画しているかどうかについてコメントしなかった。
中国本土外のEikonユーザーは記事の見出しをクリックするか、もしくはキーワードかコードでの検索を行えば、香港の抗議行動についての記事を呼び出すことができる。しかし、中国国内のユーザーはこうした記事を呼び出せず、「この記事にはアクセスできません」というメッセージが現れる。
香港政府トップが「逃亡犯条例」改正案撤回を中国政府に提案したが拒否されたとロイターが8月30日に報じた後、リフィニティブは抗議関連の報道に対する制限を強めた。この報道以前には、見出しに「香港」と「抗議」というキーワードを含むロイターの記事は年初来で246本あり、そのうち、5本以外がすべて中国本土でアクセス可能だった。しかし、8月30日─11月20日の期間でみると、こうした記事251本のうち196本、つまりほぼ5本中4本の割合で記事が遮断されていた。
特に9月4日から10月7日にかけてはフィルターによる制限が厳しく、見出しにこの2つのキーワードを含むロイターの記事104本すべてが遮断された。これは抗議デモが香港全市で過激化し、警察が放水銃やゴム弾で応戦していた時期に重なる。
リフィニティブは、市場に影響し、同社にとって中核的な顧客である金融の専門家の利害に関わる報道についてもフィルターによる制限を掛けていた。例えばフィッチ・レーティングスが香港の外貨建て長期発行体デフォルト格付け(IDR)を「AAプラス」から「AA」に引き下げたとするロイターの9月6日の記事や、抗議行動が株価や新規株式公開(IPO)に与える影響などに関する記事が制限の対象となった。
事情に詳しい関係者によると、リフィニティブでは最終的にはフィルタリング処理に従業員も関与し始め、金融関連記事が遮断されないよう対応している。しかしフィルタリングシステム自体はそのまま残っている。
新疆ウイグル自治区におけるウイグル族への弾圧など、中国で政治的にタブーとみなされそうな記事の一部はフィルタリングシステムを通過している。ウイグル族に関する他の記事の多くは遮断されている。
同社のフィルタリングシステムはロイターの記事のほか、中国新華社などアイコンにより中国国内で入手可能な97のニュースプロバイダーの記事についても1本以上の記事を遮断している。
同社は12月3日、香港で親中派による小規模なデモが行われたとする新華社の報道にも制限を掛けた。この報道は、米国での香港人権・民主主義法(香港人権法)成立を巡り米政府を厳しく批判する声に言及していた。
投資家にとって重要なニュースは依然として制限の対象となっている。中国本土のアイコンユーザーは本記事についても報道直後の段階に読むことができなかった。アクセスが制限されたのだ。
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