金融情報大手リフィニティブがロイターの香港デモ報道を阻止、8月から200本以上
ラミー氏によると、編集の誠実さと独立性に関するロイターの倫理規則、「信頼の原則」をリフィニティブが守ることが契約条件で義務づけられている、というのが理事らの考えだ。この原則には「自主検閲の受け入れを防ぐ」と記されている。
リフィニティブはこれに対し、同社は「信頼の原則に照らして自らの義務を果たしている」と説明。中国の顧客向けの政治記事にフィルターをかけることにより、事業認可で義務づけられている通り、地元の法と規制に従っていると主張した。
トムソン・ロイターとリフィニティブ双方の取締役を兼務するスミスCEOは、コメント要請に応えなかった。
ロンドン証券取引所はリフィニティブを270億ドルで買収することで合意しており、来年下期に買収が完了する見通しだ。同取引所はコメントを控えた。
天安門事件はタブー
ロイターは6月、リフィニティブが政府の圧力で複数のロイター記事を止めたと報じた。天安門事件30周年に関する記事だ。事情を知る複数筋によると、リフィニティブはオンラインの言論を統制するサイバースペース管理局(CAC)から、従わなければ中国でのサービスを差し止めると脅され、行動を起こした。
CACはこの記事についての質問に答えなかった。中国外務省からのコメントは今のところ得られていない。
6月3日、ロイターのアドラー編集主幹とマイケル・フリーデンバーグ社長はスタッフ宛の電子メールで、リフィニティブに懸念を伝えたと説明した。
リフィニティブは、中国当局からロイターの記事について圧力を受けた場合には、編集部に注意喚起すると約束した。ロイターはこれを受け、個人や記事に登場する機関から苦情が寄せられた時と同じく、配信済みの記事を訂正する理由があるか否かを判断することになる。
7月末、リフィニティブはロイターにある記事を見直すよう要請した。香港にいる中国政府の代表が地元住民に、デモ参加者を追い払うよう促したとする内容だ。1週間後、その地域で政権派と反政権派の群衆が衝突する暴動が起こった。この記事もまた、中国政府による香港への干渉を示しており、当局が神経をとがらせる内容だった。
ロイターが記事の内容は正確だと確認したにもかかわらず、リフィニティブは記事の見出しを中国のEikonから削除し、ユーザーが見つけて読むのを難しくした。8月2日、ロイターはこの記事がブロックされたことに関する記事を流した。
「戦略的中国フィルター」
リフィニティブは中国の怒りを買うような内容の報道を制限する取り組みを強化。同社の内部文書や電子メールによると、中国本土のアイコンユーザーに特定のニュースが流れるのを自動的に遮断する「戦略的中国フィルター」と呼ばれるシステムが作られた。
7月にはリフィニティブのニュース・プラットフォーム・アーキテクチャ部門のディレクターがシステムに「制限付きニュース(Restricted News)」と呼ばれるコードを新たに設け、記事に添付するよう求めた。7月17日に行われたこのコードに関する話し合いの記録によると、同ディレクターはこのコードについて「(内外の)全ユーザーに対して秘密にすべきだ」と述べた。中国の顧客がこのフィルターを無効化できるようになることをリフィニティブは望まない、というのが理由の1つだった。
同僚への電子メールによると、このディレクターは新たなコードについて「中国政府の制約のために、中国で読まれる前に追加的な処理が必要なニュースに印を付けるフラグだ」と説明した。