最新記事

香港

金融情報大手リフィニティブがロイターの香港デモ報道を阻止、8月から200本以上

2019年12月16日(月)13時15分

ラミー氏によると、編集の誠実さと独立性に関するロイターの倫理規則、「信頼の原則」をリフィニティブが守ることが契約条件で義務づけられている、というのが理事らの考えだ。この原則には「自主検閲の受け入れを防ぐ」と記されている。

リフィニティブはこれに対し、同社は「信頼の原則に照らして自らの義務を果たしている」と説明。中国の顧客向けの政治記事にフィルターをかけることにより、事業認可で義務づけられている通り、地元の法と規制に従っていると主張した。

トムソン・ロイターとリフィニティブ双方の取締役を兼務するスミスCEOは、コメント要請に応えなかった。

ロンドン証券取引所はリフィニティブを270億ドルで買収することで合意しており、来年下期に買収が完了する見通しだ。同取引所はコメントを控えた。

天安門事件はタブー

ロイターは6月、リフィニティブが政府の圧力で複数のロイター記事を止めたと報じた。天安門事件30周年に関する記事だ。事情を知る複数筋によると、リフィニティブはオンラインの言論を統制するサイバースペース管理局(CAC)から、従わなければ中国でのサービスを差し止めると脅され、行動を起こした。

CACはこの記事についての質問に答えなかった。中国外務省からのコメントは今のところ得られていない。

6月3日、ロイターのアドラー編集主幹とマイケル・フリーデンバーグ社長はスタッフ宛の電子メールで、リフィニティブに懸念を伝えたと説明した。

リフィニティブは、中国当局からロイターの記事について圧力を受けた場合には、編集部に注意喚起すると約束した。ロイターはこれを受け、個人や記事に登場する機関から苦情が寄せられた時と同じく、配信済みの記事を訂正する理由があるか否かを判断することになる。

7月末、リフィニティブはロイターにある記事を見直すよう要請した。香港にいる中国政府の代表が地元住民に、デモ参加者を追い払うよう促したとする内容だ。1週間後、その地域で政権派と反政権派の群衆が衝突する暴動が起こった。この記事もまた、中国政府による香港への干渉を示しており、当局が神経をとがらせる内容だった。

ロイターが記事の内容は正確だと確認したにもかかわらず、リフィニティブは記事の見出しを中国のEikonから削除し、ユーザーが見つけて読むのを難しくした。8月2日、ロイターはこの記事がブロックされたことに関する記事を流した。

「戦略的中国フィルター」

リフィニティブは中国の怒りを買うような内容の報道を制限する取り組みを強化。同社の内部文書や電子メールによると、中国本土のアイコンユーザーに特定のニュースが流れるのを自動的に遮断する「戦略的中国フィルター」と呼ばれるシステムが作られた。

7月にはリフィニティブのニュース・プラットフォーム・アーキテクチャ部門のディレクターがシステムに「制限付きニュース(Restricted News)」と呼ばれるコードを新たに設け、記事に添付するよう求めた。7月17日に行われたこのコードに関する話し合いの記録によると、同ディレクターはこのコードについて「(内外の)全ユーザーに対して秘密にすべきだ」と述べた。中国の顧客がこのフィルターを無効化できるようになることをリフィニティブは望まない、というのが理由の1つだった。

同僚への電子メールによると、このディレクターは新たなコードについて「中国政府の制約のために、中国で読まれる前に追加的な処理が必要なニュースに印を付けるフラグだ」と説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中