最新記事

医療過誤

麻酔を忘れて手術された女性、激痛に叫ぶも医者が気づかない!?

Doctors Operated on Woman Without Proper Anesthetic, Didn't Hear Her Scream

2019年12月12日(木)14時55分
イワン・パーマー

全身麻酔をしないままお腹にメスを入れられた女性の叫びを医師らは無視した?  faustasyan/iStock

<恐怖の医療事故が起こったのは血に飢えた独裁者の国ではなく、イギリスの普通の病院。手術中叫び続けても誰も反応しない──現実にあった悪夢に患者の女性は今も悩まされ続けている。いったい何があったのか>

イングランド南西部のヨ―ビルにある地方病院で、麻酔がかからず意識のある患者に手術を行なうという信じられない事故が起きた。この女性患者は手術中、痛みで叫び声を上げ続けたが、執刀医たちは誰一人それに気づかなかった。

患者は30代女性で、2018年にヨ―ビル地方病院で婦人科の手術を受けた。だがこのとき、脊椎の局所麻酔だけして 全身麻酔をしていなかったため、意識があるまま手術をされたと、代理人を務めるアーウィン・ミッチェル法律事務所は言う。

助けを求めて叫んだものの、医師たちにその声が届かなかったと女性は主張している。酸素マスクをつけていたためだという。

「無痛分娩の経験があるから硬膜外麻酔の感覚は知っていたが、それとは何かが違った。麻酔が効いていなかった」と女性は言う。

「手術室に入って、へそにメスを入れられた時は、激痛のあまり大声で叫んだ。でも私は酸素マスクをつけていて、医師との間にはカーテンの仕切りがあったため、誰も私の叫び声に反応しなかった」

「体内に腹腔鏡を挿入されたときもひどい苦痛だった。とどめは、腹部がパンパンになるまでガスを入れられたことだ」

<参考記事>入れ歯を外さずに手術を受けた男性の辛すぎる術後
<参考記事>自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから

患者はPTSDと悪夢に苦しむことに

法律事務所によれば、医療スタッフは血圧の上昇から女性の苦痛に気づいたにもかかわらず、手術を続行したという。「今回の一件でPTSDと悪夢に苦しめられることになった」という。

「手術台に寝かされて、叫び声を上げても周りの人々が何もせずに私を見下ろしている夢を見る。この悪夢のおかげで週に3回ぐらい夜中に目が覚めることもある」と彼女は言う。「それに医師を信じられなくなった」

「この1年は本当につらかった。自分にも、ほかの誰にも、同じことが起こって欲しくない」

ヨ―ビル地方病院の運営母体であるNHSトラストは、本誌に宛てた書面で次のように説明した。「コミュニケーションの不備により、当該手術に通常用いられるのとは異なる麻酔が使用されたようだ。患者が苦痛を味わったことについて、申し訳なく思っている。だがこの問題はまだ原告との間で解決に至っておらず、これ以上のコメントは控えたい」

20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EUの関税、蒸留酒業界に「壊滅的な結果」=業界団体

ワールド

G7、米によるカナダ「併合」について議論しない=米

ワールド

ウクライナ停戦へ前向きなメッセージ受け取る、実現は

ワールド

EUの報復関税、「現実との乖離示唆」=米通商代表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたト…
  • 5
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 6
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 7
    トランプ第2期政権は支離滅裂で同盟国に無礼で中国の…
  • 8
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 9
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中