最新記事

核軍縮

米ロ会談:トランプは「最後の核軍縮」も潰すのか

Donald Trump is failing to save U.S. and Russia's Last Arms Control Deal

2019年12月11日(水)18時30分
トム・オコーナー

ポンペオは、中国を加え、ミサイル以外の兵器を含める新しいタイプの軍縮の基盤を作るためには新STARTの境界を広げる必要があると述べた。

条約の限定的な延長を受け入れるかという質問に対し、ポンペオは、新技術の登場と高性能兵器の拡散に対応するために、新たな措置を講じる必要があると繰り返し、「現在の状態にとどまる」ことは全世界の戦略的安定性が低下する可能性があると主張した。

「条約の対象拡大も最終的には達成されなければならないが、先に二国間条約を締結しておけば、それもはるかに容易になるだろう」と、アメリカのジョン・ベイル元駐ロシア大使は10日の記者会見で語った。

米露間の軍縮体制がゼロに

アメリカ政府は過去にも、冷戦時代に旧ソ連と締結した軍縮協定を一方的に破棄してきた。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は2002年、1972年に締結された弾道弾迎撃ミサイル(ABM)削減条約から一方的に離脱した。

1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約については米ロともに相手が条約に違反していると非難しあっていたが、トランプが離脱を表明し、今年8月に正式に失効した。

新STARTが期限切れで失効した場合、アメリカとロシアはここ半世紀で初めて、互いに核兵器を抑制、検証し、データを共有する体制から完全に解放される。

「警戒すべき状態にあることは、火を見るより明らかだ」と、カーネギー国際平和基金ユーラシア・プログラムのディレクターで1690年代末に駐ロシア大使を務めていたジェームズ・コリンズは言う。「軍縮の専門家たちだけの問題ではなく、もっと広い政治の問題としてこのことが議論されていないことが、私には理解できない」

報道によると10日には、トランプとラブロフがワシントンで電撃会談に臨む予定だが。

20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダ与党新党首にカーニー元中銀総裁、トルドー首相

ワールド

ドイツ、保守と社民が連立政権樹立に向け正式交渉へ 

ワールド

仏独英伊、エジプト策定のガザ復興計画案への支持表明

ワールド

トランプ政権による仮想通貨の国家備蓄、税金投入を全
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中