「桜を見る会」問題、ホテル前夜祭「値引き」疑惑の深層
A Cherry Blossom Storm
問題は値引きだ。現時点では、値引きが実際にあったかどうか、という実態は明確になっていない。政治家の政治資金パーティーといっても、ホテル側は閣僚クラスでもそう簡単には値引きしない。だからこそ政治家の事務所側は、料理の質をなるべく落とし、用意する量も減らして、利益をなんとか確保する。今回参加者が払った5000円に「見合った」質と量の料理が提供されていただけなら、そして参加者がホテルに対して直接支払っていたのならば、寄付にも献金にも当たらず、政治資金収支報告書に記載がなくとも問題はない。
しかし、値引きが実際にあった場合、問題は別の次元で生じることになる。もちろん値引き自体は私企業の営業活動としてあり得るだろう。だがその値引きが他の取引との対価性を有し、そしてその相手方が政府であった場合はどうか。
「桜を見る会」の前日に行われたニューオータニでの前夜祭におけるホテル側の「利益供与」と、一見無関係の即位礼正殿の儀の翌日の10月23日に行われた首相夫妻主催晩餐会をホテルが「受注」したこととの関連性──つまり対価性が問題となる。
各国から要人が参列する晩餐会は最も格式が高い行事の1つであり、それを東京で催行できるホテルは、帝国ホテル、ホテルオークラ、パレスホテル、高輪プリンスホテル、そしてニューオータニといった大ホテルに限られる。そうしたホテルの中で今回、ニューオータニが晩餐会受注に成功した。当日の華麗な式典の様子をメディアで見た人も多いだろう。
この晩餐会をニューオータニが受注したことの背景に、「桜を見る会」前夜祭での利益供与があったと仮に位置付けるとしたら、少なくとも外形上は、典型的な贈収賄のスキームを疑ってみるべき事案になる──。こういう指摘が今、なされつつある。
安倍政権の「説明責任」
もちろん個別の事情を踏まえた適正な選定だったのかもしれない。例えばパレスは今回多くの王族が宿泊しており、オークラも建て替えたばかりだった。晩餐会対応がそもそも難しく、安全確保やコスト等を考慮して、ニューオータニが選ばれたという可能性も十分にあろう。
しかし、首相の側近中の側近として絶大な影響力を誇り、「史上最強の首相秘書官」の1人として評価の高い人物の親族がニューオータニの社外取締役であったという報道も出ている現在、もはやそうした一般論の説明では十分ではないだろう。