「桜を見る会」問題、ホテル前夜祭「値引き」疑惑の深層
A Cherry Blossom Storm
問題はタイミングだ。前夜祭(4月12日)の詳細が決定された後に、首相主催晩餐会(10月23日)の場所が決まっていた場合、「前夜祭で値引きをしてくれることになったから、お礼に晩餐会をニューオータニにしてあげよう」としたとも考えられなくもない。しかし、政治家個人の政務と内閣総理大臣としての公務とでは重みが全く違う以上、通常は想定し難い。
むしろ問題となるのは、その逆の場合だ。つまり、ニューオータニが随意契約で晩餐会受注に成功した後に、前夜祭の詳細を決めていた場合である。この場合、2つの催事が全くの無関係であり、同じホテルになったのは偶然であることを積極的に説明しない限り、ホテル側が一方的に「忖度」して値引きを供与したのか、あるいは当事者間の黙示または明示の合意があったのかという、あらぬ疑いを払拭し難いことになる。
仮に「桜を見る会」前夜祭において利益供与があったとすれば、その趣旨と実態はどのようなものだったのか。また、2つのイベントの場所がどのような経緯でニューオータニに決定したのか、そして晩餐会の場所選定に関する職務権限が誰にあるのか──政権側は自ら説明しなければならないだろう。
そうしなければ、今回の疑惑が、単なる裁量行使の適切性の問題ではなく、あるいは公選法や政治資金規正法違反の案件にとどまるものではなく、刑法上の贈収賄の疑いがあるレベルの話だという「疑念」を簡単には払拭できない。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」(古今和歌集・在原業平)(世の中に桜というものがまったくなかったら、どんなに春の心はのどかだろうか)
東京は今、静かな厳冬に包まれている。「桜を見る会」疑惑が史上最長となった安倍政権の終わりの始まりとなるのか、それとも適切に説明責任を果たして、憲法改正という大目標あるいは東京オリンピック・パラリンピックに向けて強力な政権運営を続けていけることになるのか。人心一新の解散総選挙という手もあれば、より洗練された危機管理によって事態を沈静化させる手もまだある。
桜を散らせるか咲かせるかは、この冬次第だろう。
<本誌2019年12月17日号掲載>
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