最新記事

ヘルス

ヘアカラーと縮毛矯正に潜む乳がん発症リスク

Breast Cancer Linked to Permanent Hair Dye and Chemical Hair Straighteners

2019年12月4日(水)17時00分
ロージー・マッコール

染め方によってもリスクは異なる Jacob Wackerhausen-iStock.

<定期的に髪を染めたり縮毛矯正をしている女性は、乳がんの発症リスクが高くなる。カラー剤などに発がん性物質が含まれているためだ>

ヘアカラー(一度染めたら落ちないもの)で定期的に髪を染めている女性は、乳がんになるリスクが最大60%増すとの研究結果が、学術誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」に掲載された。

4万5000人以上の女性の医学的記録を検証した結果、ヘアカラーの使用歴と乳がんの発症率の間に正の相関関係があることが判明した。この傾向は、特に黒人女性の間で顕著になるという。

この論文は、統計的なパターンや傾向の分析を行ったもので、ヘアカラーが乳がん発症の直接的な原因だと証明するものではない。しかし、広く普及した美容製品に発がん性物質が含まれていることを示唆する研究結果は過去にもあり、今回の研究もそうした研究と一致する。

研究によれば、ヘアカラーで定期的に髪を染めている女性は、女性全体では乳がんを発症するリスクが9%増えるという。黒人女性に限ると、発症リスクは45%増と大きく上昇する。

濃い色ほど高まる発症リスク

女性が使うヘアカラーのタイプによっても、乳がん発症のリスクに変化があった。髪を濃い色に染めるカラー剤の場合は、黒人女性で51%、白人女性で8%のリスク増となる。明るい色に染めるカラー剤では、黒人女性で46%、白人女性で12%のリスク増となった。

人種によってリスクに差が出る理由はわかっていないが、黒人向けと白人向けではカラー剤の成分が異なることに関連するかもしれない。黒人女性向けのカラー剤には、内分泌をかく乱する化学物質がより高いレベルで含まれていることを示す研究もあるという。

化学薬品を使った縮毛矯正と乳がんリスクの間にも、統計的に有意な相関関係があることが明らかになった。だが研究チームは、この結果については他の研究による検証が必要な点を強調している(いくつかの研究は、縮毛矯正剤には乳がんを引き起こすリスクはないと結論している)。

縮毛矯正で乳がんを発症するリスクは女性のあらゆる層で上昇した。人種を問わず、縮毛矯正剤を5~8週間に1回以上用いる女性では、乳がんのリスクが30%増加したのだ。

研究チームの一員で、米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)で疫学部門のトップを務めるデイル・サンドラー博士は、カラー剤や縮毛矯正剤を利用する女性に対し、人々は日常的に他にも多くの発がん性物質に接している点を指摘して、注意を促した。

一方、ロンドン大学がん研究所(ICR)で疫学を研究する上級研究員マイケル・ジョーンズは、この件に関して正式な勧告を出すには時期尚早だと釘を刺す。

<参考記事>「若ハゲ」と「若白髪」の心臓病リスクは5倍以上
<参考記事>イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

中国外務省、EUに協力呼びかけ 「世界的な課題」巡

ビジネス

英サービスPMI、1月50.8に低下 スタグフレー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中