最新記事

中ロ関係

ロシアと中国、パイプライン開通でアメリカに対抗

Russia and China Launch New Gas Pipeline, Build First Bridge

2019年12月3日(火)14時30分
トム・オコナー

パイプライン開通の日にも、プーチンと習近平は親密なところを見せた(写真は6月の首脳会談) Maxim Shemetov-REUTERS

<両国を結ぶ初の道路橋とパイプラインを相次いで完成させ、経済面でも軍事面でも協力関係を強化させつつある>

ロシアと中国は12月2日、両国を結ぶ初の天然ガスパイプラインを開通させた。11月末にはやはりロシアと中国の国境をまたぐ初めての道路橋が完成したばかり。パイプライン開通の記念式典には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席がテレビ会議を通じて参加、両国の親密ぶりをアピールした。

このパイプラインは「シベリアの力」と名づけられ、ロシア政府によれば全長およそ3000キロメートル。東シベリアにある2つのガス田から中国北東部に天然ガスを運び、輸送能力は年間380億立方メートルにのぼる。当面は吉林省と遼寧省までの開通だが、最終的には北京と上海までのパイプライン網が整うと予想されている。

pipeline.jpg

Gazprom


「パイプラインの開通は、エネルギー分野におけるロシアと中国の戦略的な協力の質を新たなレベルに引き上げ、2024年までに貿易規模を2000億ドルに拡大するという目標に近づく一歩だ」とプーチンは語った。

「このパイプラインは、エネルギー分野における両国の協力を象徴するプロジェクトだ」と習も述べた。「両国の深いレベルでの融合と互恵的な協力関係を示す優れた例でもある」

<参考記事>竹島上空に中ロの爆撃機、両国の接近を軽視できない3つの理由

西側に対抗して連携強化

また2人は、ロシアと中国が国交を樹立して今年で70年になることにも言及した。両国の関係が節目の年を迎え、また西側諸国との関係が悪化するなか、ロシアと中国はますます連携を強化しつつある。

これに警戒感を抱くアメリカは、ロシアの複数の国営企業を対象とした制裁を発動させ、また中国とは大規模な貿易戦争を展開することで、両国の影響力拡大を阻止しようとしている。これを受けてロシアと中国はいずれも、アメリカが内政干渉を試みていると反発しており、両者の関係はさらに悪化している。

<参考記事>次の戦争では中・ロに勝てないと、米連邦機関が警告

ロシアと中国の利害は完全に一致しているとは到底言えず、対立することもあるが、それでも両国はウィン・ウィンの関係を追求してきた。「シベリアの力」開通のわずか数日前には、アムール川をまたいでロシアのブラゴベシチェンスクと中国の黒河を結ぶ道路橋が完成している。

「この越境橋は、単にブラゴベシチェンスクと黒河を結ぶものではなく、貿易面や観光面における両国の関係を発展させる大きな推進力になるだろう」と、ロシアの極東・北極圏発展相であるアレクサンドル・コズロフは語った。「ロシアと中国を結ぶ初めての橋であるこの道路橋は、両国民の友情と信頼の象徴であり、未来への野望の象徴だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中