最新記事

サイエンス

セックス中の男女をMRIでスキャンした、クリスマスの特別な論文

Why Scientists Asked People to Have Sex in an MRI Machine 20 Years Ago

2019年12月23日(月)19時10分
カシュミラ・ガンダー

狭いMRIの中に2人で入るには、比較的小さな人が望ましかった dima_sidelnikov-iStock.

<権威ある医学誌BMIで記録的ダウンロード数を誇る論文は月着陸ほどの偉業ではなかったかもしれないが、20年前の純粋な探求心にあふれていた>

20年前、オランダのある研究チームがちょっと怪しげなタイトルの論文を発表した。「性行時、そして女性の性的興奮時における男女の性器の磁気共鳴映像(MRI)」----。これはMRI装置の中でのセックスに関する初の記録であるとともに、世界トップクラスの歴史と権威をもつ医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルBMIのあまたの論文の中で最もダウンロード数が多い論文の1つとなっている。それも、記念碑的な論文だけが選ばれて掲載されるクリスマス号を飾ったのだ。

BMIは、今年のクリスマス号で、この画期的な論文の20周年を祝してその業績を振り返ることにした。

研究チームの狙いは、MRI装置の中でセックスしている最中の人の性器を撮影できるかどうか、そして当時のセックスに関する常識が正しいかどうか確かめることにあった。

参加したのは8組の男女(うち1組は、路上でアクロバティックな芸を披露しているアマチュアのパフォーマー)と3人の女性で、実験は13回にわたって行われた。うち、3組のカップルには2度にわたってセックスをしてもらい、3人の女性には自分でオーガズムに達してもらったという。

論文および地元テレビ局の科学番組によると、研究チームは参加者を個人的に声がけして集めたという。MRI装置の内部がそう広くないことを考えると、参加者は身長体重ともに小柄か平均的な体格の人でなければならなかっただろう。

参加者は合意の上、オランダのとある大学病院に足を運ぶよう指示された。

たしかにくっきり撮影できた

MRI装置が置かれた部屋は研究チームのいる制御室の隣にあり、窓のカーテンは閉じられていた。研究チームはまず、女性たちに仰向けに寝てもらい、下腹部を撮影した。次に男性たちに部屋に入ってもらい、正常位でセックスをしてもらって画像を撮影。そのあと、男性は退室し、女性たちは自分で自分を刺激して達するよう指示される。いよいよというタイミングで女性から研究チームに合図が送られて撮影が行われ、それから20分後の画像も撮影して実験は終了した。

研究チームによれば女性よりも大変だったのは男性の方で、シルデナフィル(つまりバイアグラ)を飲んで実験に臨んだりした。

薬が必要なかったのは8組中1組だけ、路上パフォーマーのカップルだった。論文によれば、その理由は2人が「科学的好奇心や体に関する知識、芸術的な関心から最初から研究に関わっていた」ことや「路上パフォーマーだったため、ストレス下でパフォーマンスを行う訓練ができており、慣れてもいた」ことかも知れないという。

画像の分析から、正常位だとペニスがブーメランのような形になることや、女性が興奮すると子宮が持ち上がったようになり、膣壁が長く伸びることが分かったという。

scan.jpg

THE BMI

<参考記事>人はロボットともセックスしたい──報告書
<参考記事>セックスドールに中国男性は夢中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

対中関係に目配り必要、医療用麻薬問題で既に進展と米

ビジネス

日銀、政策金利の現状維持を決定 田村委員は利上げ主

ワールド

トランプ氏、つなぎ予算案に反対表明 政府閉鎖リスク

ワールド

WTO紛争処理制度改革、トランプ政権始動前に合意で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 2
    遠距離から超速で標的に到達、ウクライナの新型「ヘルミサイル」ドローンの量産加速
  • 3
    「制御不能」な災、黒煙に覆われた空...ロシア石油施設、ウクライナ軍のドローン攻撃で深夜に爆発 映像が話題に
  • 4
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 9
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 10
    アサドは国民から強奪したカネ2億5000万ドルをロシア…
  • 1
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 4
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 5
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中