2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた
Trump Turns Global Trade Upside Down
5.なぜ貿易戦争は避けられないのか
10月19日、マイケル・ペティス(北京大学光華管理学院金融学教授)
トランプが関税を偏愛し、相手構わず貿易戦争を吹っ掛けるのを楽しんでいるらしいことを考えると、大部分の貿易摩擦のそもそもの原因はトランプだと思いがちになる。だが現実に、世界経済には大きな不均衡があり――たとえば中国やドイツは巨額の貿易黒字を享受している一方でアメリカは巨額の貿易赤字を抱えているなど――その不均衡は各国の国内経済のひずみが原因だ。そうした構造的で解決困難な不均衡こそが、貿易に関するアメリカの敵愾心を駆り立てている。
「中国との貿易戦争が、突き詰めればトランプの個人的な敵意や再選戦略とほとんど関係ない理由は、そこにある」とペティスは書く。「貿易戦争はもっとずっと根深い世界的な不均衡を最も目に見える形で表しているにすぎない」
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。