最新記事

貿易戦争

2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた

Trump Turns Global Trade Upside Down

2019年12月27日(金)19時00分
キース・ジョンソン

3.トランプはいかにしてWTOを殺すか
12月9日、キース・ジョンソン

トランプは大統領候補だった当時、WTOを激しく非難し、自分が大統領になったら脱退すると息まいた。だが大統領になって以降のトランプは、それとは異なる戦略を推し進めてきた。WTOの紛争仲裁能力を骨抜きにして、不平等な貿易を行っている国(アメリカや中国を含む)に責任を取らせる機能を無効にさせるという戦略だ。アメリカはトランプが大統領になる前からWTOの紛争解決システムに不信感を抱いてきたが、トランプが大統領になって以降はこれまで以上に容赦ない攻撃を行っており、一部には世界の貿易システムそのものの存続を危ぶむ声もある。

「つまりトランプ政権の貿易政策の特徴である単独行動主義が近いうちに広範囲に伝染し、国家間の貿易紛争が法律ではなく関税や貿易障壁、利己的な保護主義によって解決される時代に逆戻りする可能性があるということだ」とジョンソンは書いている。

4.エコノミストの大脱走
10月22日、マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)

ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンをはじめ多くのエコノミストたちは、何十年も前からグローバル化や自由貿易の素晴らしさを説き、そのマイナス面を指摘する人々を激しく批判してきた。だが今、彼らはその報いを受けている。グローバル化の多くの側面がもたらし得る痛みや混乱を、自分たちが過小評価していたことに気づいたのだ。トランプは貿易やグローバル化に対する大衆の怒り(や混乱)に乗じて、有害な保護主義を実践してきた。

「突き詰めると、貿易促進主義が自由貿易の理念に打撃をもたらしている」と、ある専門家はハーシュに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中