2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた
Trump Turns Global Trade Upside Down
3.トランプはいかにしてWTOを殺すか
12月9日、キース・ジョンソン
トランプは大統領候補だった当時、WTOを激しく非難し、自分が大統領になったら脱退すると息まいた。だが大統領になって以降のトランプは、それとは異なる戦略を推し進めてきた。WTOの紛争仲裁能力を骨抜きにして、不平等な貿易を行っている国(アメリカや中国を含む)に責任を取らせる機能を無効にさせるという戦略だ。アメリカはトランプが大統領になる前からWTOの紛争解決システムに不信感を抱いてきたが、トランプが大統領になって以降はこれまで以上に容赦ない攻撃を行っており、一部には世界の貿易システムそのものの存続を危ぶむ声もある。
「つまりトランプ政権の貿易政策の特徴である単独行動主義が近いうちに広範囲に伝染し、国家間の貿易紛争が法律ではなく関税や貿易障壁、利己的な保護主義によって解決される時代に逆戻りする可能性があるということだ」とジョンソンは書いている。
4.エコノミストの大脱走
10月22日、マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)
ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンをはじめ多くのエコノミストたちは、何十年も前からグローバル化や自由貿易の素晴らしさを説き、そのマイナス面を指摘する人々を激しく批判してきた。だが今、彼らはその報いを受けている。グローバル化の多くの側面がもたらし得る痛みや混乱を、自分たちが過小評価していたことに気づいたのだ。トランプは貿易やグローバル化に対する大衆の怒り(や混乱)に乗じて、有害な保護主義を実践してきた。
「突き詰めると、貿易促進主義が自由貿易の理念に打撃をもたらしている」と、ある専門家はハーシュに語った。