2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた
Trump Turns Global Trade Upside Down
1.貿易戦争に勝つためにロバート・ライトハイザー通商代表を起用したが、結局負けた
8月2日、エドワード・オルデン(米外交評議会上級研究員)
ロバート・ライトハイザー米通商代表は懲罰的な関税や一方的な行動を好み、世界の貿易システムに批判的な傾向がある。古い法律を引き合いに出して高額な関税を導入し、ほかの国々を脅して譲歩を強いるというのが彼の基本的なやり方だ。これがメキシコとカナダ相手にある程度功を奏してNAFTAに代わる新協定の合意に至った。だがこの「最大限の圧力」作戦は、中国とヨーロッパ相手の貿易戦争においてはほとんど成果をもたらしておらず、今後もその状況が変わるとは思えない。
「トランプの貿易政策を支えてきた理論のすべてが間違いだったことは明らかだ」とオルデンは書いている。「その理論はゾンビのように生き続けるかもしれないが、今ある最小限の成果は今後、ますます縮小していくだろう」
2.見せかけだけの合意
10月14日、クリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)
トランプが展開している貿易戦争の中でも最大の戦いである中国との貿易戦争は激しさを増す一方で、2019年後半時点でもまだ続いている。たとえ何らかの譲歩をしたとしても、トランプは来年の大統領選に向けて再び関税引き上げを行う可能性もある。だが細かな条件がどう変わろうと、中国との合意はトランプ政権が当初目指していたようなもの――、即ち政府による産業補助や知的財産権の侵害、為替操作などアメリカが不満をもつ不公正慣行すべてを正すものにはならないだろう。
「さらに大きな問題は、アメリカと中国の意見が一致する問題がほとんど何もないことだ」とバルディングは書く。「問題が何なのか、それをどう解決するのか、大まかな目標が何なのかについてさえ、意見が一致していない」